社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2017.03.17 公開

神経調節性失神(反射性失神)

neurally mediated syncope

解説:山﨑 純一 (鳥取県済生会境港総合病院 循環器内科副院長)

神経調節性失神はこんな病気

失神とは一過性に意識消失を起こす状態をいい、一時的に脳全体が必要とする血液が十分に行き届かなくなります。比較的速やかに数分以内で意識の回復がみられます。
前駆症状(以下に主な症状を記載)が多くの場合で現れますが、前駆症状が全くなく突然失神を起こすこともあります。

前駆症状
頭が重たい、身体がふわふわ浮いた感じ、冷や汗をかく、ものが二重に見える、血の気が引いて気が遠くなる、腹が痛い、むかむかする、吐いてしまうなど

神経調節性失神には血管迷走神経性失神、状況失神、頸動脈洞症候群が含まれます。

血管迷走神経性失神 長時間立ったままや座ったままの同じ姿勢で仕事をしたり、痛み刺激を受けたり、不眠や肉体的疲労が長く続いたり、精神的恐怖を体験することが誘因となって起こる
状況失神 日常のある特定の動作(排尿、排便、飲み込み、咳き込みなど)のときに起こる
頸動脈洞症候群 衣服の着替えや重たい荷物の上げ下げで極端に首を回したり伸ばしたり、またネクタイなどをきつく締めたりすることが誘因となって起こる

このタイプの失神は発症に自律神経反射が深く関与しています。自律神経は人間が生きていくために無意識のうちに心身の機能を調節する神経で、自律神経反射は自律神経によって起こる生体反応のことです(心臓を動かす、汗をかくなど)。
自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は、緊急時やストレス時にはたらき、心身を活発にする神経です。血圧を上げたり、心拍数を上げたりするはたらきがあります。副交感神経は、心身を休め回復させる、身体のメンテナンスを担う神経で、血圧を下げたり、心拍数を下げたり、消化管のはたらきを活発にするはたらきがあります。通常は交感神経と副交感神経がバランスを保って心身の機能を調節しています。

神経調節性失神はさまざまな誘因で交感神経と副交感神経(迷走神経)のバランスが悪くなり、交感神経抑制と迷走神経緊張が起こることで血圧が低下したり、脈が遅くなったり、あるいは両者が起こって失神に至ります。大多数が後遺症を残さない予後良好の疾患ですが、2~3年の間に3人に1人くらいの頻度で再発を認めます。

山﨑 純一

解説:山﨑 純一
鳥取県済生会境港総合病院
循環器内科副院長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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