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2020.12.16
5歳を過ぎても3カ月以上の期間、月1回以上の頻度でおねしょ(夜尿)が続く状態を夜尿症といいます。睡眠中のおしっこの生産を抑えるホルモンが少ないため大量におしっこを作ってしまう、睡眠中の膀胱の動きをコントロールすることができなくて、膀胱の中に尿をためておくことができない、睡眠が深すぎて尿意(おしっこを出したくなる気持ち)に気づきづらいなどが主な原因です。
小学校入学前の子どもの10%程度にみられるとされ、決して珍しいものではありません。成長し、脳と膀胱の成熟に伴って改善していきます。これを「一次性の単一性夜尿症」といいます。
注意しなければいけないタイプの夜尿症は二つあります。一つはおむつがとれていた期間が6カ月以上あったのに、再びおむつが必要になってしまった夜尿症です。この場合は「二次性夜尿症」と呼ばれます。二つ目は、起きている昼間の排尿状況に何かしらの異常がある場合です。これは「非単一性夜尿症」と呼ばれます。この両者のどちらかに当てはまった場合、何かしらの病的な要因がある可能性が高いため、早期の病院受診をお勧めします。ここでは一次性の単一性夜尿症、いわゆる典型的な「おねしょ」の経過について説明をしていきます。
入眠中の自覚ない排尿であるため、本人に症状はありません。近年は夜尿症がある子どもはそれがない子どもたちに比べ、自分自身に自信が持てない(=自尊心の低下)割合が多いとされています。
一次性の単一性夜尿症の診断は問診ならびに診察、尿検査で行なわれるため、難しいものではありません。生活指導・薬物療法などでも改善が乏しい場合や、二次性夜尿症の一部、非単一性夜尿症の場合には超音波検査などを含めた精密検査が行なわれることがあります。
まずは子どもに、夜尿症は悪い病気ではなく、自分に何か問題があって起こっているものではないこと、実はたくさんの子どもが同じように夜尿症という状態にあること、成長とともに消えていくものであることを伝え、安心感を与えましょう。
日常生活でのアドバイスとしては、水分は日中になるべく取るようにする。就寝2時間前に夕食を済ませ、寝る前の水分をコップ一杯程度までに抑える。入眠前に完全排尿させる。遅寝を避ける。中途覚醒をさせないなど、子どもと家族が達成できる指導を行ないます。これらの指導の後3~6カ月で改善されなければ、個々に合った治療を導入していきます。
一般的な夜尿症(一次性の単一性夜尿症)の早期発見は難しくありません。おねしょの程度は、着ているパンツが濡れる程度から敷布団まで濡れてしまうレベルまでさまざまです。両親に夜尿症の既往がある場合には子どもが夜尿症を発症する可能性が高くなります。
通常昼間のおむつは3歳半までにとれますが、とれていたはずのおむつが再び必要になった場合や、昼間の排尿になんらかの異常を伴う場合は、子ども本人が気にしなくても早期に病院で受診するようにしましょう。
またおしっこがうまく出せない子に、起きているときにみられる尿こらえ姿勢(踵で股の部分をおさえるようにして座り込む。足を交差させて尿を我慢する。不必要なときに爪先立ちをする)は、親からただの癖と捉えられていることがあります。このような体勢をとっている場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
一次性の単一性夜尿症は大多数のケースで、年齢とともに自然によくなります。ただ、おねしょをする自分を恥じる、夜のおしっこに失敗している自分を責めるなどの理由から自分に自信を持てなくなるケースがあります。子どもが小さいときは周りが指摘しなければ、本人がおもらしを気にすることはありません。成長の中で、おもらしをしたことを悔んでいたり、悩んでいるような様子がみられたら、そのときはそっと声をかけてあげてください。かかりつけ医への相談のタイミングとなります。
また一次性の単一性夜尿症の子どもを持つ保護者は、持たない保護者に比べ、生活の質が低い傾向にあることが分かっています。保護者が子どものおねしょに悩んでいる場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
夜尿症予防の具体的な対策は、まだはっきりと分かっていません。脳と膀胱機能の成熟により自然とよくなることは分かっているので、病気というよりは、子どもの成長過程の中でのちょっとした困りごとが続いているというイメージでよいと思います。
逆に病気として捉えるのであれば、本人の自尊心を傷つけてしまう病気という見方になります。そこで予防の観点としては、自尊心を傷つけないようにすることが目標といえます。まずは、おねしょをしたときに絶対に叱らないことです。きっと、子どもがまだ赤ちゃんのときには朝起きておむつが濡れていても叱らなかったと思います。この叱らないを徹底しましょう。叱ってしまう原因の多くは、年齢的にそろそろおねしょがなくなる時期といった情報や、周りの子どもがおねしょをしなくなったという情報が増えてきたことに起因するあせり・不安・心配です。
もう一つの予防は、もし仮に子どもの自尊心が傷ついてしまった場合でも早く気づいてあげることです。これはおねしょを前にして表情変化がないか、おねしょに対するネガティブな発言がないかを気にとめておくとよいと思います。逆にすでに気にしている子どもに「気にしなくてよい」という言葉をかけるのは避けましょう。本人が気にしている=おねしょの状態がなくなってほしいと思っている、というサインです。かかりつけ医に相談しましょう。
解説:千葉 幸英
加須病院
小児科科長
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