済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
ドクターカーは、その名のとおり医師(救急医)が乗って救急現場に向かう車のことです。大阪・千里病院のように、医師のほかに看護師や救急救命士がチームとなって乗車するケースのほかに、医師だけが乗っている場合など、人員の構成はさまざまですが、医師が救急現場に駆けつけるという点は同じです。
通常の救急車は救急救命士が現場に向かって傷病者のけがや病気の状態を見ますが、治療の範囲が限られています。そこで専門知識を持った医師が現場に行って処置をすることで、救命率を高めるのです。これがドクターカーの役割です。
千里病院では1993年1月から24時間365日体制でドクターカーの運用を開始しました。これは日本ではかなり早い取り組みといえます。
千里病院のドクターカーはNISSAN「キャラバン」をベースとした特別仕様。排気量2500ccの4WDです。車体は病院によってさまざまで、セダンタイプや軽自動車などを使うこともあるようです。
ドクターカーも救急車と同様に赤色灯が設置されています。救急現場に向かう際や傷病者を病院に搬送する際など、緊急を要するときは赤色灯を点灯して走行します。
人工呼吸器
除細動器付き心電図モニター
上の棚に治療器具が入っている
すぐに取り出せるように天井には手袋
バッグには薬や治療器具がセットされている
バッグには小型のエコーも入っている
千里病院のドクターカーは特別仕様で、天井が高く、立って治療や作業ができるようになっています。
内部には、人工呼吸器、除細動器(心臓に電気刺激を与える医療機器)付きの心電図モニターのほか、さまざまな薬や治療器具が置かれ、簡単な手術もできるようになっています。
千里病院のドクターカーが現場に出動するまでの流れは以下のとおりです。
まず、119番通報が消防の通信指令室に入ります。救急車の出動指令と同時に、ドクターカーの出動が必要と判断したらすぐに病院に要請が入ります。すると医師、看護師、救急救命士、ドライバーといったチームのメンバーの携帯電話が一斉に鳴ります。メンバーはすぐに準備してドクターカーに乗り込み現場に向かいます。出動要請から発車までの時間は約2分です。
現場に向かう車内では、医師が消防に電話をして、傷病者の状態を確認し、必要な治療器具や薬を用意します。
車に乗り込むと医師が消防に電話をして、傷病者の状態を聞き取ります。
傷病者のけがや病気の状態に対して、必要な治療器具や薬を準備します。
消防に119番通報が入り、ドクターカーを要請するかどうかを瞬時に判断する必要があります。ドクターカーが出動しなければいけないほど重篤な状態であるかを判断するため、千里病院では消防と連携して出動基準となるキーワードを決めています。例えば「窒息している」「意識がない」「けいれんが続いている」といったものです。
電話でキーワードに該当する説明があった場合、消防はすぐにドクターカーの出動を要請します。
消防がドクターカーを要請する際に二つのパターンがあります。
一つは、119番通報を受けて救急車と一緒にドクターカーも要請する場合で、これを「同時要請」といいます。もう一つが、救急救命士が現場で傷病者の状態を見てドクターカーを呼ぶ場合で、こちらは「現場到着後要請」、略して「現着後要請」といいます。
当然ながら、現着後要請に比べて同時要請の方が治療の開始が早く、傷病者の命を救う確率は高くなります。
千里病院のドクターカーの年間出動件数は国内でもトップクラスの実績です。
2022年度(2022年4月~2023年3月)は1281件でした。1日平均だと3.5件になります。
月別の出動件数では、多いのは1~3月の寒い時期。ドクターカーの出動要請がある心筋梗塞や脳卒中は、寒い冬場に多くなりやすいようです。一方、夏は熱中症での出動要請が増える傾向にあるそうです。
なお、対応する病気やけがのうち最も多いのは心不全などの心疾患で、全体の4~5割を占めます。
冬の寒い時期は出動件数が増える傾向にある
消防から要請があれば救急現場に向かうドクターカーですが、同時要請で現場に向かっている最中に傷病者の状態が想定ほど悪くないと分かれば、途中で引き返します。引き返す割合は出動件数全体の半数にのぼるそうです。残りの半数は現場に駆けつけて初期治療を行ないます。その際も、重症でなければ傷病者のかかりつけの病院などへの搬送となり、緊急を要する場合や重症の場合に限って千里病院の救命救急センターに搬送して治療します。
このように引き返したり他の病院に搬送したりするため、実際に同センターで治療するケースは、出動件数全体の2割程度。それでもその2割の人を迅速に治療して命を救うため、千里病院のドクターカーは要請があれば現場に急行するのです。
解説:澤野 宏隆
千里病院
千里救命救急センター
センター長 ICU室長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。