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2024.11.06
膀胱頸部硬化症は、膀胱頸部の内尿道口(膀胱から尿道への入り口)の周囲が狭くなり、尿の排出障害が起こる病気です。多くは男性でみられますが、まれに女性でもみられます。
原因は、臓器そのものの異常によって起こる「器質的狭窄(きしつてききょうさく)」と、臓器に異常がなく症状が現れる「機能性狭窄(きのうせいきょうさく)」に分けられます。
器質的狭窄は、基本的に先天性のものを指しますが、前立腺炎に関連して、膀胱頸部の周囲組織が線維性増殖(線維成分が増殖して硬くなること)が起こり、排尿時に膀胱頸部が開きにくくなるといった症状が現れます。前立腺肥大症に対して行なう、尿道から内視鏡を挿入して肥大した前立腺を切除する経尿道的前立腺切除術後の狭窄や、前立腺がんに対する前立腺全摘出術後の狭窄が原因になることもあります。
機能性疾患としては、排尿時に排尿筋と括約筋がうまく協調せずに起こる排尿障害がみられます。器質的狭窄と機能性狭窄について、以下の表に示します。
膀胱頸部の狭窄によって生じる排尿の異常が原因で「下部尿路症状」が起こります。下部尿路症状とは、尿意切迫・頻尿・夜間頻尿など“尿をためる”ことに問題がある畜尿症状と、尿勢低下・排尿困難・排尿開始遅延・排尿後滴下など“尿を出す”ことに問題がある排尿症状があります。これらの症状は、膀胱頸部硬化症に特有なものではありません。
前立腺肥大症や神経因性膀胱など、似たような症状がみられる病気と区別するために「除外診断」を行なう場合があります。
診断は、膀胱尿道造影による膀胱頸部の狭小化や、膀胱出口での排尿障害があることを示す膀胱頸部の堤防上膨隆・挙上が内視鏡検査で認められるかを検査しますが、機能性の場合はこれらの所見が認められないこともあります。
保存的治療として、交感神経α受容体を遮断することで末梢血管を拡張させる「αブロッカー(α遮断薬)」が効果的な場合がありますが、すべての患者さんで効果が得られるわけではありません。外科的治療としては「経尿道的膀胱頸部切除(切開)術」があります。
先天的な場合は、生まれながらに尿の勢いが弱いため、尿路感染や前立腺肥大症を合併しない限り、排尿異常に気づかないことがあります。
若い男性が尿道口から病原菌が入り、尿が通る経路(尿道、膀胱、腎臓など)に炎症を起こす「尿路感染」を繰り返す場合は、膀胱頸部硬化症が原因になっていることがあります。また、前立腺の手術後に排尿状態が悪化した場合は、膀胱頸部が狭窄している場合があります。これらの症状に該当する人は、一度受診されることをお勧めします。
先天性の場合や機能性狭窄による膀胱頸部硬化症を予防する方法はありませんが、前立腺炎に対しては長時間の座位を避けたり、飲酒や刺激物の摂取を避けたりすることで予防が可能です。
解説:金原弘幸
松坂総合病院
泌尿器科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。