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2021.02.03
尿道狭窄とは、文字通り尿道が狭くなることです。原因としては、外傷によるものや炎症によるものなどがあります。
外傷によるものとは、何らかの原因で尿道に傷がつき、治る過程で傷が引きつれて治ることで、尿道が狭くなる状態をいいます。具体例としては、ガードレールをまたごうとして滑ってしまい、会陰部(男性は陰のうと肛門の間)を強打し尿道が切れる(断裂)例や、交通事故で骨盤骨折をきたし、尿道を損傷してしまう例、さらには、尿道に内視鏡を挿入する手術(経尿道的手術)後に発症する例などがあります。
炎症が原因の場合、尿道炎が治った後に徐々に尿道が狭くなります。炎症によって尿道狭窄症を起こす尿道炎の代表としては、淋菌性尿道炎(りんきんせいにょうどうえん=淋病・主に性行為感染症)があります。
なお、女性の尿道は短く、狭窄をきたすことはまれなので、ここでは男性の尿道狭窄について解説します。
軽度の狭窄では症状はありませんが、狭窄の程度に応じて、尿の勢いが低下します。ひどくなると、ポタポタとしか尿が出なくなったり、尿が全く出なくなったりします。
なお、尿道狭窄以外に尿の勢いが低下する病気の代表的なものとしては前立腺肥大があります。
尿流量測定:尿が膀胱にたまった状態で、測定機器に向かって排尿し、勢いを検証します。
尿道鏡検査:尿道先端から内視鏡を用いて尿道内の検査を行ないます。直接狭い部位を観察できますが、狭窄の影響で内視鏡が通らない場合、すべての尿道部位の観察はできません。
尿道造影検査:尿道先端から、造影剤を尿道の中に注入しX線撮影を行ないます。尿道のほぼ全長を確認できます。
主に手術療法を行ないます。
狭窄が尿道の先端部分のみ(外尿道口狭窄)であれば、同部を切開する方法があります。先端部分以外の尿道狭窄の場合、内尿道(ないにょうどう)切開術を行ないます。内尿道切開術とは、尿道先端から尿道内部にメスを内包した内視鏡を挿入し、狭い部位を内視鏡で見ながら内側から切開し尿道を広げるもので、通常は入院が必要です。
内視鏡が尿道を通らない場合には実施が困難なことがあり、その際には、膀胱瘻(ぼうこうろう=下腹の皮膚から直接膀胱に向かって管を入れる方法)を造設し対応することがあります。
手術で尿道を拡張しても、拡張した部分は傷になり、その傷が治る過程で再び尿道が狭くなることがあります。そのため、手術後は、定期的にブジーという処置(下図参照)を行ないます。これは、さまざまな太さがある金属製の棒状の器具を用いて、狭い部分を拡張する処置で、通院で行ないます。軽度の尿道狭窄であれば、手術はせずに、このブジーのみを実施することもあります。
骨盤外傷治療後の人や、尿道に内視鏡を挿入する経尿道的手術歴のある人は、尿の勢いが悪いと感じたら、泌尿器科専門医に相談してください。
外傷性の場合、予防手段はありません。炎症性のものの場合には尿道炎にならないことが重要ですので、性行為感染症にかからないような生活を心がけることが必要です。
解説:今津 哲央
千里病院
泌尿器科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。