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2023.08.09

天疱瘡 (てんぽうそう)

pemphigus

解説:緑川 和重 (松山病院 皮膚科主任部長)

天疱瘡はこんな病気

天疱瘡は、皮膚の細胞の接着剤を壊す物質が突然身体の中にできてしまい、水ぶくれ(水疱)などの症状が現れる自己免疫性疾患です。

人間は一つの細胞から始まり、その後、細胞分裂によってたくさんの細胞ができることで身体が作られます。皮膚もたくさんの細胞でできており、それぞれの細胞は特殊な接着剤でくっつきあっています。天疱瘡は、体内に作られた自己抗体(自分の細胞を攻撃してしまう抗体)によって、この接着剤が剥がれ、細胞がバラバラになってしまいます。なお、自己抗体ができる理由は不明です。

障害を受ける皮膚の細胞の接着剤は、代表的なものとして3種類あることが分かっており、その種類ごとに「尋常性天疱瘡」「落葉状(らくようじょう)天疱瘡」「類天疱瘡」と病名が付いています。

天疱瘡の症状

皮膚にかゆみや痛みを伴う赤い斑点(紅斑)や水ぶくれができたり、口の中などの粘膜にびらんができたりします。重症化すると、身体中の皮膚が剥がれてしまって全身やけどのようになり、命にかかわります。

天疱瘡の検査・診断

血液検査や、皮膚をメスで米粒ほど切り取って調べる組織検査などを行ないます。
血液検査では自己抗体を検出することができます。組織検査では、表皮に水ぶくれのほか自己抗体の沈着を確認できます。

天疱瘡の治療法

ステロイドの飲み薬で症状をおさえることができます。
ステロイドには副作用がありますが、コントロールしやすい副作用が多いので、病気が長引いて重症化し命にかかわることに比べると、影響は少ないでしょう。

症状が軽い患者さんは外来治療になりますが、症状が重い患者さんは入院治療が必要なこともあります。入院が必要になる患者さんは、10人中1人くらいです。

天疱瘡の初期段階は原因不明のかゆみや、多発する水ぶくれを発症する人が多いです。こうした症状が現れたら、皮膚科専門医を受診して相談してください。

天疱瘡は発症の原因が不明で、残念ながら予防法はまだ分かっていません。健康に気をつけて、日々を健やかに過ごしてください。

解説:緑川 和重

解説:緑川 和重
松山病院
皮膚科主任部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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