2014.12.03 公開
2025.07.29 更新

一過性脳虚血発作

transient ischemic attack

解説:久保 道也 (富山病院 脳神経外科)

一過性脳虚血発作はこんな病気

「食事中、急に右手に力が入らなくなって、箸がポロリと落ちた。立ち上がろうとしたら右足に力が入らず、立ち上がれなかった。しかし、5分間位じっとしていたら症状が消えて元通りに戻った。」これが、一過性脳虚血発作の典型的なパターンです。一過性脳虚血発作は、TIA(ティー・アイ・エー)とも呼ばれます。症状は、半身の脱力やしびれ、言葉が出ない(失語症)、呂律が回らないなどさまざまです。

一過性脳虚血発作(TIA)とは、一時的に脳の動脈が詰まったり流れが悪くなったりして、脳梗塞のような症状が出たものの、早い時点で血液の流れが再開して症状が消える現象を指します。厳密には、病院でCTやMRIの検査で脳梗塞に至らなかったことを確認できた場合にのみ一過性脳虚血発作と診断します。

しかし、これは原因を残したままで、運よく一時的に血液の流れが再開したに過ぎません。
したがって一過性脳虚血発作は、脳梗塞の警告発作と考えた方がいいでしょう。

一過性脳虚血発作の起こり方(機序)は、大きく2つに分かれます。1つ目は、心房細動(不整脈の一種)などによって心臓の中に血栓(血液の塊)ができ、それが血流にのって流れて脳の血管に詰まったものの、自然に溶けて血管の流れが再開する場合です。(図1)

2つ目は、生活習慣病などにより、脳動脈や頸動脈が狭くなった状態で、血圧低下や脱水(血液凝縮)が一時的に起こって、狭窄よりも抹消部に十分に血液が運ばれなくなったり、小さな血栓が流れて移動したために症状が現れるものの、血圧などがもとに戻ると症状も消えるものです。(図2)。

一過性脳虚血発作を放っておくとどうなる?

一過性脳虚血発作が起こってから48時間以内に、本物の脳梗塞を発症しやすいことが分かっています。たとえ症状が消えても、すぐに脳神経外科や脳神経内科のある病院を受診してください。

一過性脳虚血発作は脳梗塞の警告発作であり、症状が戻ったからこそ、すぐに脳神経外科や脳神経内科のある病院を受診してください。また、原因が前項のどちらであるかによって、使用する薬も異なります。

早期発見のポイント

一過性脳虚血発作の症状は、半身の脱力やしびれ、言葉が出ない(失語症)、呂律が回らない、視野が半分欠けるなどさまざまですが、症状が一時的で消えてしまう点では同じです。

ポイントは「症状が戻ったからもう少し様子を見よう」などと思わないで、一刻も早く脳卒中に対応できる病院を受診することです。

予防の基礎知識

一過性脳虚血発作は脳梗塞の警告サインです。そのため、一過性脳虚血発作が起こった時点で、適切な治療を受けることが脳梗塞の予防につながります。症状が現れたら、自己判断をせず、すぐに病院を受診するようにしましょう。

1. 一過性脳虚血発作が起こったら、迷わず脳卒中の対応病院を受診すること。

2. 生活習慣病をお持ちの方は、その管理はもちろんですが、一度脳ドッグなどを受けて脳動脈や頸動脈に狭窄がないか確認をすること。

3. 手首の動脈に触れた際(検脈)に、脈拍が不規則であったり、脈が速い(1分に100回以上)場合は、心房細動の可能性があるので心電図の検査を受けてください。

久保 道也

解説:久保 道也
富山病院
脳神経外科


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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