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2017.11.08
心臓の下方に存在する左右の部屋(心室)を隔てる壁(心室中隔)に穴が存在する状態を指します。新生児1000人あたり3人の割合で存在することが知られており、子どもの先天性心疾患のうち約20%を占める、最多頻度の疾患です。その半数は、生後1年以内に穴が自然に閉鎖するとされています。しかし、重症例では死亡する場合もある病気です。成人で発見される先天性心疾患の中では、心房中隔欠損症に次いで2番目の頻度(約15%)となります。
壁に穴が存在するため、全身に血液を送り出す、最も重要なポンプである左心室から、肺に血液を送り出すポンプである右心室に、血液が短絡※して流れ込みます。このためたくさんの血液が肺に送られることになり、肺の血管の血圧が上昇して肺高血圧を起こします。また、肺に送られた血液は、再び左心房を経て左心室に返ってくるため、この2つの心室のサイズが大きくなります(心拡大)。
※短絡: 血液が本来通るべき血管と別のルートを流れる状態のこと
心室中隔欠損症
欠損孔の大きさにより、短絡する血液量が異なるため、重症度に差が生じます。最重症例では誕生後まもなく、欠損孔を当て布で塞ぐ早期手術(心室中隔欠損孔閉鎖術)が必要になります。心室中隔欠損には、しばしばその他の先天性心疾患を合併することも知られているため注意が必要です。
最重症例では誕生後まもなく、呼吸が荒く、回数が多いことにより発見されます。その他には、ミルクや食事をとる量が減り体重が増えない、元気がない、汗をかきやすい等の症状により見つかる場合もあります。軽症例であっても比較的大きな心雑音が聴こえることから、乳児検診や健康診断などにより多く発見されるため、きちんと検診を受けることが重要です。聴診で心室中隔欠損が疑われたら、心臓超音波検査にて診断が確定されます。
先天性の疾患であるため、予防は困難です。ここでは心室中隔欠損症に伴う合併症の予防について解説します。
心室中隔欠損症は、成人になると呼吸困難やむくみなどの心不全症状だけでなく、原因不明と思っていた発熱の原因となっている場合があります。欠損孔を通ったジェット血流(血流の乱れ)によって心臓の壁が傷つけられ、そこに細菌が付着することで、感染性心内膜炎を発症することがあるためです。細菌は、外科的処置をする際などに処置を行なった部位から入り、心臓に到達します。そのため、心室中隔欠損症の方は、抜歯などの際に抗生物質を予防的に使用する必要があります。心不全症状や感染性心内膜炎があれば、早期に心臓外科による手術を受けましょう。
解説:坂本 知浩
済生会熊本病院
心臓血管センター・循環器内科部長
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