社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2021.01.20

尋常性ざ瘡(にきび)

acne vulgaris

解説:中川 浩一 (富田林病院 皮膚科部長)

尋常性ざ瘡はこんな病気

尋常性ざ瘡(にきび)は、毛根を包んでいる袋状の組織である毛のうを中心とした炎症性疾患です。毛のうの一部からは毛が生えていますが、毛が抜け落ちて“さや”だけになったものも多くあります。毛のうには脂腺という脂(あぶら)を出す腺が付着していて、毛のうの内部に脂を充満させています。特に思春期になると、この脂の分泌が活発になって毛のうを埋め尽くし、さらには毛のうが皮膚表面に盛り上がるようになってしまいます。これが「白にきび」といわれるものです。

毛のうの中にはアクネ菌と呼ばれる細菌が常在していますが、この菌が白にきびのなかで増殖してくると、強い炎症が生じて「赤にきび」と呼ばれる状態になります。見た目に膿がたまったような感じになるものもあります。多くの場合、白にきびや赤にきびは混在してみられます。

いずれも、ホルモンのバランスが高まっている思春期に多くみられるため、青春のシンボルともいわれます。したがって、一種の生理的な現象として捉えることもできますが、問題はこれらの病変を放置していると最終的にはにきび瘢痕(はんこん)やにきびケロイドという後遺症を残してしまうことです。いわゆる「あばた顔」になってしまうのです。そのため、適切な予防や治療が重要となります。

 

尋常性ざ瘡の検査・診断

見た目の状態は毛のうから生じる白や赤、黄色の丘疹(きゅうしん=皮膚表面が小さく盛り上がった状態)ですので、特別な検査なしで見ただけで診断される場合がほとんどです。ただし、真菌(かび)やニキビダニが原因となっていたり、酒さ(しゅさ)と呼ばれる病気を合併していたりすることもあるので、一度は皮膚科専門医を受診して正しい診断を受けることも必要です。

尋常性ざ瘡の治療法

塗り薬など外用剤による治療が中心ですが、いくつかの種類があり、主治医と相談して選択してください。先に述べた白にきびは毛のうの詰まりが原因となっており、毛のうの出口を開放するアダパレンという薬剤が適しています。白にきびが進行してアクネ菌の活動が関与してくると(赤にきび)、細菌を制御する抗生剤が必要になります。

薬剤には抗生剤のみが成分のものもありますが、アダパレンとの合剤もあります。治療効果をみながら、いろいろと試してみるのもいいかもしれません。ただし、いずれの薬剤もある程度の刺激感があり、顔が赤くなったりかさかさしたりしますので、最初は塗る回数を減らすなどの工夫が必要なこともあります。なお、アダパレンは妊娠している女性や妊娠している可能性のある女性には使えませんので注意してください。症状が非常に強く、膿疱(のうほう=皮膚に膿がたまったもの)が多発しているような患者さんには抗生剤の内服が必要なこともあります。

中高生で顔に赤いぶつぶつができてくれば、まずにきびが疑われ、早期発見はたやすいと思われます。しかし、ほかの病気が紛れ込んでいる可能性もありますので、皮膚科の受診をお勧めします。にきびくらいで病院に行くのはどうかと思われる人も多いようですが、皮膚科専門医なら的確な治療法を選択できますので、ぜひ行なってみてください。

にきびはストレスや不規則な生活習慣が大きく影響します。規則正しい生活を心がけ、朝は遅くとも7時までには起床して夜更かしはやめましょう。食事は野菜中心にして、できるだけ甘いものは控えましょう。パンよりもご飯のほうがいいです。というのも、パンを食べるとどうしても油や砂糖を多く取るようになるからです。
ご飯はできれば精白米ではなく、玄米を食べましょう。玄米はミネラルやビタミン類が精白米の10倍以上含まれ、栄養価が高いです。詳しくは富田林病院・皮膚科のホームページ「免疫力を高めましょう!」の項目を参考にしてください。

解説:中川 浩一

解説:中川 浩一
富田林病院
皮膚科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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