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2024.06.19
薬剤性肝障害は、薬剤の服用によって起こる肝障害です。医療機関で処方される薬だけではなく、市販薬、あるいは店頭やインターネットで入手可能なサプリメント、漢方薬でも引き起こされることがあります。
肝障害は大きく3つの型に分けられます。肝細胞がなんらかのダメージを受けた影響で肝逸脱酵素(AST・ALT)が上昇する「肝細胞障害型」が60%、血中ビリルビンが増加し、黄疸(おうだん=皮膚や白眼が黄色くなる症状)を引き起こす「胆汁うっ滞型」が20%、両方の特長を持つ「混合型」が20%とされています。
症状の経過は「中毒性」と「特異体質性」に分類されることが一般的です。
薬剤あるいは薬物による代謝物が肝障害を引き起こすのが「中毒性」で、薬剤を服用してから早い段階で症状が出現し、摂取量が多いほど強くなります。発症しやすい薬はある程度予測可能で、抗不整脈のアンカロンなどがあります。以前は抗生物質が原因となるケースが多くありましたが、最近は抗がん剤や健康食品、サプリメントによる肝障害も増加傾向にあります。これらはインターネットで簡単に購入可能で、成分不明なことも多く、注意が必要です。
一方、「特異体質性」は、体質によるアレルギー性タイプと先天的に代謝酵素を欠くタイプがあります。いずれも投与によって初めて症状が発症するため予測は困難です。
初期の自覚症状として倦怠感や黄疸が挙げられます。また、肝機能障害以外にも、発熱、皮疹、好酸球上昇などの症状がみられます。
診断の際に重要となるのが問診です。特に「薬剤の投与開始から発症までの期間」と「投与中止後の回復までの期間」が大切です。投与開始から発症までの期間について、初回投与で5〜30日、再投与で1〜15日に発症する例が多くみられます。ただし「胆汁うっ滞型」で再投与の場合は、肝臓内の細い胆管の傷害が徐々に進行するため、30日以降に肝障害が起こることもあります。
「特異体質性」の場合では、薬剤によるアレルギー反応が疑われたときに原因薬を特定できるリンパ球刺激試験(DLST)も有効です。血液検査で調べることが可能な「薬剤によるリンパ球刺激試験(DLST)」も有効ですが、薬剤により結果が修飾される場合があり、例えば漢方薬では複合される薬が多いため1剤の量が少なく偽陰性になることもあります。また薬剤によっては、成分のあるものがリンパ球を誘導し活性化を促すため偽陽性となる場合もあります。
肝障害の原因として疑わしい薬剤の使用を中止しても症状の改善が乏しい場合は、ウルソデオキシコール酸やタウリンの内服、グリチルリチンの静脈注射を行ないます。さらに重症例や病状が長引く場合は、ステロイドの投与も考慮されます。
原因として疑わしい薬剤を診断するために再投与する「チャレンジ・テスト」は、重症化のリスクや生命を脅かせるリスクがあるため禁忌とされています。
最近新たに使い始めた薬やサプリメントがあれば、問診の際に必ず伝えるようにしましょう。約8割の肝障害は薬を使い始めてから90日以内に起こりますが、それ以降の発症もあるので注意が必要です。薬を使い始めてから長期間経過しているからといって、肝障害が起こらないわけではありません。
肝障害をきたす薬としては抗生物質によるものが多かったのですが、最近では抗がん剤による肝障害が増えています。また健康食品、サプリメントによる肝障害も増加する傾向があります。以前、肝臓に優しいといわれ一時流行したウコンにより少なからず肝障害を引き起こした事例もありました。インターネットによる購入は手軽ですが成分が不明であることも多く今後、注意が必要です。
過去に薬物アレルギーが起こしたことのある人やアレルギー体質の人はあらかじめ医師に伝えましょう。アレルギー体質ではない人も日頃から栄養や睡眠をしっかり取り、体調管理に気を付けてください。また、薬物性肝障害に以前なったことのある人は原因薬剤を医師に伝え、再度使わないようにすることが重要です。
解説:松本 隆之
泉尾病院
消化器内科 主任部長
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