済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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2020.07.08
日本語では槌指(ついし、つちゆび)と記載し、一般的には「突き指」のうちの1パターンです。マレットとは英語で槌のことで、指先が屈曲して(折れ曲がって)伸展(まっすぐ伸ばすこと)ができない様子が槌のように見えることからこの名前が付けられています。
指先または手の甲の側からの外力により指の第一関節(DIP関節)が急に強く折れ曲がってしまい、指伸展機構(指を曲げたり伸ばしたりする仕組み)が損傷することで生じます。原因として、鋭利な刃物などによる直接的な腱の切断、バレーボール、バスケットボール、野球などの球技による外力での腱断裂があげられます。そのほかにも、同様のメカニズムによる末節骨(爪のついた部分の骨)の手の甲側の伸筋腱停止部(指を曲げたり伸ばしたりする腱の根元の部分)骨折や、末節骨の掌側亜脱臼(手のひら側の骨が脱臼しかけている状態)を伴う伸展機構の破壊があります。
野球やバレーボールなどの球技では中指と薬指に多発し、症状として受傷直後から第一関節を自力で伸ばすことが不可能となります。そのまま放置してしまうと、指の付け根の関節(MP関節)も折れ曲がって「スワンネック変形」をきたすことがあります。
治療法を決定するためには、X線側面像で末節骨の掌側亜脱臼の有無を確認する必要があります。
そのまま放置してしまうと回復しにくくなるため、早期治療が重要です。第一関節の脱臼がある場合とない場合で治療法が異なります。第一関節の脱臼がなければ装具もしくは経皮的鋼線刺入(皮膚から鋼線を通して骨を固定する方法)で8週間第一関節を伸ばした状態で固定します。第一関節の亜脱臼がある場合、脱臼の整復を行ない、まっすぐに伸ばした状態で固定します。この場合、手術の方法として、2本の鋼線で骨を固定する石黒法が多く用いられます。
指にけがをした後、変形がある、腫れが強い、熱を持っている、変色がある、痛みが強い場合などは指の第二関節(PIP関節)を抑えて第一関節を自力でまっすぐ伸ばせるかどうかを確かめます。「突き指」としてはマレットフィンガー以外にも第一、第二関節の側副靭帯(側面の靭帯)が損傷しているなどの可能性もあり、直ちにRICE処置を行ないます。これは、「Rest(安静)」「Ice(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上)」の頭文字を並べたもので、スポーツ外傷の応急処置の基本を示しています。
第一関節を自力で伸ばすのが困難であれば、マレットフィンガーを疑い直ちに整形外科を受診しましょう。一般に指を引っ張るなどの民間療法が突き指に対して行なわれますが、脱臼や骨折の有無を確認せず施行することは二次的な損傷を生じることもあり危険で推奨できません。
突き指を意識的に避けることは極めて困難ですが、基本的には手指のストレッチやテーピングなどが勧められます。
球技による受傷が多いことから、競技種目ごとに予防策が検討されています。基本はボールを扱う動作が安全かつ確実にできるように訓練することが大事です。野球やソフトボールでは、グローブやミットでの捕球動作を正確、確実に行なうことが重要で、捕球に際してグローブに添えた手の指をしっかり伸ばすことなどがあげられます。また、バレーボールではブロック時に指を確実に伸ばし、指と指の間を開かないことがあげられます。サッカーのキーパーなどではテーピングの併用が勧められます。
解説:一戸 貞文
北上済生会病院
院長
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