社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2023.01.05

微小変化型ネフローゼ症候群

minimal-change nephrotic syndrome

解説:大江 健二 (東神奈川リハビリテーション病院 診療部長 内科部長)

微小変化型ネフローゼ症候群はこんな病気

微小変化型ネフローゼ症候群は、ネフローゼ症候群の中でも病理組織を光学顕微鏡で調べても目立った変化がないものを指します。小児のネフローゼ症候群のうち、およそ80%は微小変化型ネフローゼ症候群です。

ネフローゼ症候群は尿にタンパクが漏れ出ることで血中タンパクが減り、浮腫などが起こる病気です。明らかな原因疾患がない一次性(原発性)と、原因疾患によって引き起こされる二次性(続発性)に大別され、微小変化型ネフローゼ症候群は一次性に分類されます。小児に多くみられますが、成人においても一次性ネフローゼ症候群の約40%を占め、70歳以上でも約20%を占めます。

アトピー性皮膚炎喘息などのアレルギー疾患保有者の場合、発症リスクが高いといわれています。
微小変化型ネフローゼ症候群を発症する原因は明らかになっていませんが、免疫異常(T細胞機能異常の関与など)が考えられています。

微小変化型ネフローゼ症候群の症状

急に発症し、全身の浮腫を伴いやすいのが特徴です。通常、血圧の上昇はみられません。
高濃度のタンパク尿が必ず発生しますが、通常は血尿がみられることはありません。また、低タンパク血症や高コレステロール血症を伴います。

微小変化型ネフローゼ症候群の検査・診断

尿検査でタンパク尿を調べると、分子量の小さいタンパクであるアルブミンの割合が高くなるのが特徴です(この状態を「選択性が高い」と表現します)。

診断は腎生検で採取した病理組織で行ないますが、光学顕微鏡や蛍光抗体法(蛍光色素が付いた抗体を用いて抗原の所在を調べる染色方法)による所見はほとんど正常です。
電子顕微鏡を用いた検査で初めて異常を認めます。具体的には、腎臓内の毛細血管が球状に集まっている糸球体(しきゅうたい)の上皮細胞の「足突起(そくとっき)」と呼ばれる部分の消失がみられます。

ただ、小児のネフローゼ症候群の場合は多くがこの病気であることから、通常は腎生検を行ないません。成人の場合は、一般的に腎生検を行ないます。

微小変化型ネフローゼ症候群の治療法

ステロイド薬を使った治療の効果が高く、およそ90%の患者さんが完全寛解(異常がなくなって正常な機能が回復)し、腎不全を起こしにくいといわれています。寛解率は小児で90%以上、成人で60~90%です。
ただ、この病気はしばしば再発します。再発を繰り返すときは免疫抑制剤を投与します。

また、浮腫への対症療法として利尿薬を使用します。低タンパク血症による循環不全(健康維持に必要な血液を臓器や組織に送り出せなくなった状態)がある場合は、アルブミン製剤などのタンパク製剤を投与することもあります。
食事療法では、減塩タンパク制限食(塩分が少なく、低タンパクの食事)を基本としますが、小児の場合は通常、食事で摂取するタンパク質の制限は行ないません。

小児で急に発症し、尿検査で高濃度のタンパク尿がみられれば、まず微小変化型ネフローゼ症候群を疑います。

微小変化型ネフローゼ症候群は、明らかな原因疾患がない一次性(原発性)のネフローゼ症候群です。なんらかの免疫異常が原因とみられますが、残念ながら現時点では予防策はありません。

解説:大江 健二

解説:大江 健二
東神奈川リハビリテーション病院
診療部長 内科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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