済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2023.01.05
微小変化型ネフローゼ症候群は、ネフローゼ症候群の中でも病理組織を光学顕微鏡で調べても目立った変化がないものを指します。小児のネフローゼ症候群のうち、およそ80%は微小変化型ネフローゼ症候群です。
ネフローゼ症候群は尿にタンパクが漏れ出ることで血中タンパクが減り、浮腫などが起こる病気です。明らかな原因疾患がない一次性(原発性)と、原因疾患によって引き起こされる二次性(続発性)に大別され、微小変化型ネフローゼ症候群は一次性に分類されます。小児に多くみられますが、成人においても一次性ネフローゼ症候群の約40%を占め、70歳以上でも約20%を占めます。
アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患保有者の場合、発症リスクが高いといわれています。
微小変化型ネフローゼ症候群を発症する原因は明らかになっていませんが、免疫異常(T細胞機能異常の関与など)が考えられています。
急に発症し、全身の浮腫を伴いやすいのが特徴です。通常、血圧の上昇はみられません。
高濃度のタンパク尿が必ず発生しますが、通常は血尿がみられることはありません。また、低タンパク血症や高コレステロール血症を伴います。
尿検査でタンパク尿を調べると、分子量の小さいタンパクであるアルブミンの割合が高くなるのが特徴です(この状態を「選択性が高い」と表現します)。
診断は腎生検で採取した病理組織で行ないますが、光学顕微鏡や蛍光抗体法(蛍光色素が付いた抗体を用いて抗原の所在を調べる染色方法)による所見はほとんど正常です。
電子顕微鏡を用いた検査で初めて異常を認めます。具体的には、腎臓内の毛細血管が球状に集まっている糸球体(しきゅうたい)の上皮細胞の「足突起(そくとっき)」と呼ばれる部分の消失がみられます。
ただ、小児のネフローゼ症候群の場合は多くがこの病気であることから、通常は腎生検を行ないません。成人の場合は、一般的に腎生検を行ないます。
ステロイド薬を使った治療の効果が高く、およそ90%の患者さんが完全寛解(異常がなくなって正常な機能が回復)し、腎不全を起こしにくいといわれています。寛解率は小児で90%以上、成人で60~90%です。
ただ、この病気はしばしば再発します。再発を繰り返すときは免疫抑制剤を投与します。
また、浮腫への対症療法として利尿薬を使用します。低タンパク血症による循環不全(健康維持に必要な血液を臓器や組織に送り出せなくなった状態)がある場合は、アルブミン製剤などのタンパク製剤を投与することもあります。
食事療法では、減塩タンパク制限食(塩分が少なく、低タンパクの食事)を基本としますが、小児の場合は通常、食事で摂取するタンパク質の制限は行ないません。
小児で急に発症し、尿検査で高濃度のタンパク尿がみられれば、まず微小変化型ネフローゼ症候群を疑います。
微小変化型ネフローゼ症候群は、明らかな原因疾患がない一次性(原発性)のネフローゼ症候群です。なんらかの免疫異常が原因とみられますが、残念ながら現時点では予防策はありません。
解説:大江 健二
東神奈川リハビリテーション病院
診療部長 内科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。