社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

顎骨骨髄炎 (がくこつこつずいえん)

osteomyelitis of the jaw

解説:金﨑 朋彦 (千里病院 歯科・口腔外科部長)

顎骨骨髄炎はこんな病気

「骨髄炎」とは、骨(骨髄)の中に細菌が侵入し炎症を起こす病気です。その中でも、口腔内の細菌に感染したことが原因で起きた炎症が、顎骨(がくこつ=顎の骨)内の骨髄にまで波及するものを「顎骨骨髄炎」といいます。

上顎と比べ下顎は血流が悪く、骨髄に達した細菌が死滅しないため、一般的には下顎の骨の方が骨髄炎になりやすい傾向があります。

経過により急性と慢性に大別され、最も多い原因が歯性感染(虫歯<う蝕>歯周病が原因の感染)です。

顎骨骨髄炎の種類

顎骨骨髄炎のうち、悪性腫瘍の治療のため大量に放射線を照射されて顎骨に血流障害が生じ、これに主に歯性感染が加わって骨髄炎が発生したものを「放射線性骨髄炎」と呼びます。

さらに別タイプのものとして、骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移などの治療で使用される骨吸収抑制剤(ビスフォスフォネート系製剤やデノスマブなど)の副作用で顎骨骨髄炎が生じたものを「骨吸収抑制剤関連顎骨壊死(こつきゅうしゅうよくせいざいかんれんがくこつえし)」といいます。2003年に初めて報告されて以来、患者数は増加していますが、どのようにして発生するのかは不明です。ビスフォスフォネート系製剤を内服している場合、約0.1%に自然発生し、抜歯により約1%に生じると報告されています。4年以上継続して内服している患者さんに多く発生するという報告もあります。

顎骨骨髄炎の治療

乳幼児では急性に発症することがありますが、適切に抗菌薬を飲めば症状がひどく悪くなることはほとんどありません。

成人の場合、急性例では薬物療法に続き、溜まった膿の切開や抜歯を含め、原因となった歯を治療します。壊死した骨が分離している場合は、その骨の除去のみ行ないます。

慢性の場合は薬物療法が基本ですが、外科療法(手術)を併用する必要もあります。外科療法には、炎症部位の除去や、患部皮質骨(炎症を起こしている骨の表面にある細かい骨)の除去、顎切除などがあります。

放射線性骨髄炎の治療は通常の骨髄炎の治療に準じますが、炎症が広範囲に及び骨自体の活性が低下しているため、多くの場合治りにくいです。

骨吸収抑制剤関連顎骨壊死は治療法が確立されておらず、以前は保存療法が原則でしたが、近年では外科療法の有用性も示されています。

早期発見のポイント

原因の多くが歯性感染であるため、口の中の衛生状態を良好に保つことが大切です。

放射線性骨髄炎については、放射線治療前に口腔内の状態を確認し、治療が必要な歯があれば必ず治療を完結させておきます。放射線治療中は口内炎も頻発するため、うがいなども並行して行なうべきです。また、健常な歯も放射線照射を被り、口腔乾燥によるトラブルが起こるため、治療後も歯科を受診しましょう。

骨吸収抑制剤関連顎骨壊死については、薬剤投与前に必ず歯科を受診し、口腔内にトラブルがないかを確認することが重要です。治療期間中に抜歯せざるを得なくなった場合には、主治医と歯科医師両名に相談します。状況に応じて、一定期間休薬した後に抜歯し、抜歯後に治癒が確認できたら治療を再開することもあります。

予防の基礎知識

三つのタイプの顎骨骨髄炎について解説しましたが、いずれも常日頃から口腔機能が健全に保たれていることが重要です。

放射線治療で健全な歯も被爆してしまいますが、歯や歯周組織の状態が悪い人は放射線性骨髄炎の症状がひどくなりやすいです。放射線を当てる範囲に顎骨が含まれる場合、治療が決まったらできるだけ早く歯科医院を受診し、口腔内のチェックを受けるべきです。

骨吸収抑制剤関連顎骨壊死の予防としては、骨吸収抑制剤の治療が決まったら早期に歯科医院にかかり、虫歯や歯根の先端に病巣があるか、あるいは歯周組織の状態などの確認を受けましょう。特に、この病気は義歯が合わないために傷ついた部分から発症することもあるので、義歯を使用している場合は専門医を受診しておく必要があります。

平均寿命の延伸に比例して骨粗鬆症患者が増え、それに従い骨吸収抑制剤関連顎骨壊死の患者数も年々増加しています。歯科医院を受診するタイミングは、薬物療法を開始する前、開始後に抜歯が必要になった場合、あるいは開始後顎骨壊死を発症した場合の三つが考えられます。どの時期であってもまずはかかりつけ歯科を受診し、そのときの状況に応じて病院歯科口腔外科の受診が必要になるかもしれません。

自覚症状がなくても、かかりつけ歯科をもち、少なくとも年に1回は健診を受けることが強く勧められます。

金﨑 朋彦

解説: 金﨑 朋彦
千里病院
歯科・口腔外科部長


※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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