社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2014.05.21 公開

くも膜下出血

subarachnoid hemorrhage

解説:中務 正志 (宇都宮病院 脳神経外科診療科長)

くも膜下出血はこんな病気

くも膜とは、脳の外側を覆っている脳と脳脊髄(のうせきずい)液全体を包んでいる膜で、くも膜の内側の液体がたまっているスペースがくも膜下腔です。このスペースで出血が起こると「くも膜下出血」と呼ばれます。その原因の8割程度は脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)という脳の動脈がこぶ状にふくれたものの破裂です。そのほかには、脳動静脈奇形、腫瘍などいろいろな原因があります。症状は出血量によって異なり、単なる頭痛吐き気から、意識障害、心肺停止までとかなりの差がみられます。死亡率は5割以上といわれ、命が助かった人でも高い確率で後遺症を残す可能性があります。また、再出血を起こす確率も高く、早期の発見と治療が重要になります。

くも膜下出血の治療法

くも膜下出血の治療は、主に4つのポイントに分けて行なわれます。

1 出血源の診断と再出血予防の治療
くも膜下出血の診断はまずCTなどで行ない、さらに原因となる病変(主に脳動脈瘤)があるかを調べます。脳動脈瘤が疑われたら出血源の処置を行ない、再出血を防止します。開頭手術によるクリッピング術(脳動脈瘤の根元を金属製のクリップで挟み、脳動脈瘤に血が届かないようにして再出血を防ぐ方法)、または脳血管内治療(コイル塞栓術:カテーテルという細い管を脳動脈瘤の中まで入れ、管にコイルという非常に柔らかい糸状の金属を挿入して脳動脈瘤を内側から固めてしまう方法)が選択されます。

2 出血による脳損傷の治療
出血で損傷した部位の脳には、その後腫れが生じて二次的に損傷が進行することがあります。この場合は薬剤などで治療し、上記1と並行して行なわれます。

3 脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)の治療
脳血管攣縮とは、くも膜下出血を発症した3日後ごろに起こる脳の血管が細くなる現象です。2週間ほど続くと、脳に血流が届かなくなり、麻痺などさまざまな症状を引き起こして命に関わることもまれではありません。治療が困難な場合が多く、また治療薬の多くは出血源が治療されていないと使用できないので、早期の出血源処置が重要です。

4 正常圧水頭症の治療
正常圧水頭症とは、くも膜下出血の後で脳脊髄液が正常に循環しなくなる状態です。出血後1カ月ほどしてから認知症、意識障害、歩行障害、失禁などの症状が現れます。治療では、シャント手術(体内に細長い管を埋め込む方法)を行ない、脳脊髄液の循環を改善します。

中務 正志

解説:中務 正志
宇都宮病院
脳神経外科診療科長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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