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2024.01.05
強直性脊椎炎とは、腰と骨盤との関節である仙腸関節、腰や胸の脊椎(背骨)、手足の関節などにある靭帯の付着部(筋肉が骨に付く部分)に炎症が生じる病気です。
免疫作用が過剰にはたらいて自身の組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」に分類されます。原因は白血球に存在する遺伝子HLA-B27が関連していると考えられています。
腱や靭帯の付着部に強い負荷がかかり、免疫の異常が引き起こされることで炎症が生じるとされています。進行すると病変した部位の骨と骨が癒着し、動かしづらくなる場合があります。
男性の10代後半から20代に多く、40歳以降の発症は少ないといわれています。
初期症状の多くは、特に誘因のない腰やお尻の痛み(仙腸関節痛、坐骨神経痛)、こわばりです。安静にしていても痛みは治まらずにかえって強まり、身体を動かすと反対に症状が楽になる特徴があります(炎症性腰痛)。
すべての患者さんがそうなるわけではありませんが、進行すると身体を反らすことが困難になり、前かがみの姿勢になります。股、膝、肩、足などの大きい関節に症状が広がることもあり、かかとや足の裏、太ももの外側、肋骨、鎖骨、坐骨など靭帯が骨に付く部位で痛みが起こります。また、倦怠感や疲労感、体重減少、発熱などの全身症状が出ることもあります。
主に症状やX線検査から診断します。3カ月以上続く炎症性腰痛、こわばり、身体の動きの低下、大きな呼吸がしにくい、などを問診と診察により確認します。
X線検査では、仙腸関節において骨のびらん、硬化、関節の隙間が狭くなるもしくは消失する、などの変化が認められます。脊椎にも同様に、骨の変化、靭帯に骨棘(骨のとげ)がみられます。
発症後早期にはレントゲンで異常が確認されないこともあるため、炎症などを詳しく調べる場合はMRI検査を行ないます。また採血検査で炎症反応やHLA-B27遺伝子の有無を調べます。
残念ながら現時点では、病気を完全に治すことは難しいです。治療は痛みなどの症状をおさえ、日常生活に支障が出ないようにすることが目標になります。治療の主体となるのは運動療法や薬物療法です。
■運動療法
進行すると背骨や胸の動きが制限されるため、体操や運動によって、柔軟性の改善、筋力の維持・増強を行ないます。運動内容は患者さんの状態によって決めますが、痛みが出ない程度にゆっくりとした運動やストレッチが勧められます。強い矯正を行なう整体・マッサージは控えた方がよいでしょう。
運動・ストレッチは、日本脊椎関節炎学会ホームページに掲載されている「AS患者さんのための体操教室」を参考にしてください。
■薬物療法
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ジクロフェナク、ナプロキセン、セレコキシブなど)が第一選択となります。7~8割の患者さんで痛みが和らぐといった効果がみられます。ただし、長期間服用すると、胃腸障害や腎障害といった副作用が現れるため、注意が必要です。
非ステロイド性抗炎症薬の効果が得られなかった場合は、TNF阻害薬が使用されます。日本では、2010年からインフリキシマブとアダリムマブの適応が承認され、これらの薬によって、非ステロイド性抗炎症薬が効かなかった患者さんの7割以上に、痛みやこわばりなどの症状の改善がみられています。
近年では、IL-17阻害薬やJAK阻害薬といった新しい薬も許可され、治療の選択肢も増えてきました。
慢性腰背部痛は、痛みの原因や異常が見つからない非特異的腰痛、椎間板ヘルニア、椎間板の傷みや骨の変形がみられる変形性腰椎症、肩こりなどの病気が原因となることが多いため、強直性脊椎炎の診断が容易ではなく、症状が現れてから診断までに時間がかかる(平均7~9年程度)とされていました。
早期発見のためには、「腰痛が3カ月以上続く」「朝、夜間に腰がこわばる」「安静にしていても痛みが改善せず、動いている方が楽」「45歳未満」などに該当する腰痛がある場合は、整形外科医やリウマチ医といった専門医を受診することが大切です。
残念ながら発症を予防することは難しいです。
喫煙が原因で病状がより進行しやすいと報告されているため、強直性脊椎炎と診断された際には禁煙をお勧めします。
解説:津嶋 秀俊
八幡総合病院
整形外科主任部長
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