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2018.02.27
腰部・仙骨部から坐骨神経が走行する臀部、下肢後面や外側面へ広がる疼痛、あるいは疼痛を呈する症候群を総称して坐骨神経痛といいます。
図: 坐骨神経
坐骨神経痛の原因となる疾患は、下記が挙げられます。
<腰部や脊椎以外の原因>
坐骨神経の腫瘍、アルコールなどの中毒性疾患、糖尿病、帯状疱疹、下肢の動脈閉塞、子宮内膜症などの婦人科疾患など
頻度的には、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症によるものが多いです。
保存治療:
先に挙げた「坐骨神経痛の原因となる疾患」に当てはまる場合は、その原因に対する治療を原則とします。疼痛に対しては、鎮痛剤による対症療法も行ないます。最近は、神経障害性疼痛治療薬※1が使われることも多いです。
※1神経障害性疼痛治療薬: 神経の痛みの治療に使われる薬剤。痛みを伝える神経伝達物質の過剰放出をおさえる
手術のタイミング:
頻度が多い、腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症を例に挙げます。
腰椎椎間板ヘルニアは下肢に麻痺、膀胱直腸障害※2があれば、早期に手術治療を考えますが、主な症状が坐骨神経痛である場合は、通常2~3カ月の保存治療(服薬、リハビリ、神経根ブロック※3等)で改善することが多いです。しかし、その後も日常生活上での障害(痛みで就労困難が続く、歩行障害など)が強い場合、早期に疼痛を取り社会復帰したい場合などには、椎間板ヘルニアを摘出する手術治療を検討します。
※2膀胱直腸障害: 尿閉、残尿、失禁、排尿遅延などの症状を示す機能障害
※3神経根ブロック: 腰の神経に直接局所麻酔剤を注射する治療法
腰部脊柱管狭窄症は中高齢者に多く、坐骨神経痛を含む下肢のしびれ、間欠跛行※4が主な症状です。軽度、中等度の神経障害であれば、長期的にも悪化することは少ないといわれ、服薬等で症状をコントロールしていきます。膝ががくんとなる、足が上がらず転びやすい、スリッパが脱げてしまうといった下肢の麻痺や膀胱直腸障害など、重度の神経障害があるときは、早期手術を考慮します。馬尾症候群により両足底のしびれや違和感を伴う場合は、膀胱直腸障害や疼痛が強くなくても手術後の改善が思わしくないことがあります。痛みが強くなくても、手術治療を含めた早期の対応が不可欠です。
※4間欠跛行: 歩行などで下肢に負荷をかけると足に痛みやしびれが生じ、少し休むと症状が軽減して歩行ができるようになること
下記のような症状は、坐骨神経痛の可能性があります。
臀部の痛み、下肢の痛みやしびれ、足首・足指が動きにくくなる、歩くと陰部が熱くなるなど
「医学解説」で述べたように、原因はさまざまで疾患によって治療法も異なります。自然回復の可能性がある椎間板ヘルニアだけでなく、放置すると症状が悪化していく疾患の可能性もあるので、専門医の診察を受け、原因に沿った治療をしていくことが大切です。最近は、病院と診療所がお互いに連携しながら医療を提供する病診連携が進んでいるため、自己診断せずにまずはかかりつけの医師に相談しましょう。
「医学解説」で挙げた「坐骨神経痛の原因となる疾患」に当てはまる場合は、その原因に対する治療が原則です。
腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症を例にすると、体重増加、中腰の姿勢は椎間板に圧が加わるため注意が必要です。腰を支えているのは骨だけではなく、大部分は腰背筋や腹筋といった筋肉です。適度なストレッチや腰痛体操をお勧めします。運動することで痛みが誘発される場合には、一度主治医にご相談ください。
喫煙は、椎間板の変性を進めるという報告があります。椎間板変性は、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の原因になるため、喫煙は控えるようにしましょう。
解説:鳥飼 英久
済生会習志野病院
脊椎外科センター・センター長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。