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2021.07.07
接触皮膚炎とはいわゆる「かぶれ」のことです。主に、身体の外からの刺激物質やアレルギー源となる物質が、皮膚に接触することによって起こります。
刺激物質によるものを「刺激性接触皮膚炎」、アレルギー源となる物質によるものを「アレルギー性接触皮膚炎」といいます。
また、光線が関与するものとして、物質に紫外線が当たって活性酸素が生じ皮膚の細胞を傷害する「光毒性接触皮膚炎」と、紫外線(主に長波長紫外線のUVA)の影響で成分が変化し、その結果生まれた物質に対するアレルギー反応で皮膚炎が生じる「光アレルギー性接触皮膚炎」の2種類があります。このほかに、皮膚病変が接触範囲を超えて全身に出現する「全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群」もあります。
刺激性接触皮膚炎では基本的には接触した範囲に、アレルギー性接触皮膚炎では接触部位を超えて湿疹反応が生じます。
湿疹反応とは、急性の場合にはかゆみを伴う紅斑(赤い斑点)、丘疹(きゅうしん=ブツブツ)、小水疱(しょうすいほう=水ぶくれ)を呈し、滲出液(ジクジクした汁)を伴うこともあります。一方で、慢性の場合には苔癬化局面(たいせんかきょくめん=皮膚が厚く盛り上がった状態)や痂皮(かひ=かさぶた)、亀裂(ひび割れ)を呈することがあります。
原因を探るための検査は、一般的に血液検査ではなくパッチテスト(皮膚アレルギー試験)が推奨されます。
光線が関与する場合には、通常のパッチテストの他に最小紅斑量の測定と光パッチテストが必要になります。
ただし、スギ花粉皮膚炎などの空気伝播性接触皮膚炎や接触蕁麻疹反応を合併するような症例では、パッチテストで原因物質を特定することはできません。即時型アレルギー(アレルゲンが体内に入って数時間以内で症状が出るアレルギー)の検索およびプリックテスト(アレルゲンを少量皮膚に入れて反応をみる検査方法)を実施し、原因物質を特定します。
効率的なパッチテストを実施するために、日本人で陽性率が高い原因物質を網羅した貼付用テープがあります。
患者さんの背部や前腕屈側等にテープを貼付する48時間貼付試験を行ない、48時間後、72時間後、1週間後にICDRG(国際接触皮膚炎研究班)基準を用いて判定します。そして、72時間後の判定で紅斑・丘疹を認めたものを陽性と診断します。
染毛剤等の使用で皮膚炎が生じた場合は、その製品を実際に皮膚に塗って検査するオープンテストを行ない、20分後、48時間後、72時間後、1週間後に判定します。
薬物治療はステロイドの外用や保湿薬の併用が基本です。補助的に、抗ヒスタミン薬の内服治療を用いることもあります。重症の場合は、ステロイドおよび免疫抑制剤の全身投与を行なうことがあります。
接触皮膚炎の診療では、まず湿疹・皮膚炎から接触皮膚炎を疑うことが重要となります。基礎疾患にアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎や酒さ(しゅさ=顔面に赤みや小さな吹き出物が現れる炎症性皮膚疾患)が存在することがあり、それら皮膚炎と接触皮膚炎を鑑別するためにも積極的にパッチテスト(皮膚アレルギー試験)を実施するのがよいでしょう。
残念ながら、現時点で、外部からの刺激に対する過敏性を改善させる方法はありません。接触皮膚炎の予防には、原因となる物質を突き止めてできるだけ接触しないように工夫しましょう。
原因物質を避ける上で、以下も参考にしてください。
■刺激性接触皮膚炎:刺激の強い物質(洗剤、せっけんといった界面活性剤、化粧品やヘアケア剤、クリーニング溶剤や灯油などの化学物質)との接触を避けてください。
■アレルギー性接触皮膚炎:植物、金属、化粧品、医薬品などさまざまなものが抗原(原因)となりますが、どのような状況で悪化するのかなど、状況や症状を記録しておくと原因の特定に役立ちます。
■光毒性接触皮膚炎:原因物質として、ソラレンやコールタールが有名ですが、アロマテラピーや香水に使用されるベルガモット油に含まれる化学成分のベルガプテンでも生じることがあります。
■光アレルギー性接触皮膚炎:染毛剤やサンスクリーン剤のほか、農薬(除草剤・抗生剤)、植物(セリ科・ミカン科・クワ科)、外用薬(ケトプロフェン湿布等)などが原因物質となります。
■全身性接触皮膚炎:空中の花粉類との接触で生じる空気伝播性接触皮膚炎や、痔疾(じしつ=肛門部の病気)用薬、腟錠(クロマイ)などによる湿疹型薬疹がありますので、日用品など身のまわりにあるものが原因となり得ることを覚えておくとよいでしょう。象徴的な例を挙げますと、特定のせっけん製品に含まれた加水分解コムギ(加水分解された小麦のタンパク質)で接触性蕁麻疹およびアナフィラキシーを発症することが明らかとなり、現在では医薬部外品として使用できなくなっています。
解説:田中 亮多
水戸済生会総合病院
皮膚科 主任部長
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