済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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2018.12.26
甲状腺は首の前部、いわゆるのど仏の下部に位置しており蝶が羽を広げたような形をしています。甲状腺ホルモンは、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺の表面にあるTSH受容体に結合することで分泌され、身体全体の代謝や精神状態の維持のほかに、骨形成、神経の発育などにも関与しています。 バセドウ病は、TSH受容体に対する抗体(元来細菌やウイルスなどから身体を守るための免疫の一部を担うもの)が遺伝的な要素や妊娠、出産などなんらかの原因によって体内で作られ、TSH受容体に結合し甲状腺を刺激し続け、甲状腺ホルモンが過剰に生み出され分泌されることで起こる病気です。人口1000人あたり0.2~3.2人と報告されており、男女比は1:3~5ぐらいで20~40代の比較的若い女性に多いとされています。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることにより体重の減少、動悸、手の震えや異常な発汗、下痢などが起こります。また、イライラしたり落ち着きがなくなったりすることがあり、場合によっては眼球が突出すること(バセドウ病眼症という)もあります。 合併症としては心房細動という不整脈の発生や心不全、骨粗鬆症などがあります。ほかにも、病気を放置したり不十分な治療を受けたり、バセドウ病の大きな手術後や感染症にかかったりした場合には、甲状腺クリーゼと呼ばれる命に関わるような重篤な状態に陥ることがあります。また、甲状腺ホルモンは胎児の発育にも関与するため、妊娠前、妊娠中、授乳期には甲状腺の機能を良好にコントロールする必要があります。特に妊娠初期には、胎盤で作られるホルモンの影響で一時的に甲状腺ホルモンが過剰になることがあり、注意が必要です。
甲状腺ホルモンを抑えることを目的として、抗甲状腺薬の服用や手術、放射線ヨード療法を行ないます。抗甲状腺薬の服用中でも、甲状腺機能が適切にコントロールされていれば妊娠は可能ですが、妊娠のごく初期には使用する抗甲状腺薬にも注意が必要ですので主治医との相談をお勧めします。
先に述べたように、バセドウ病の症状は体重の減少、動悸、異常な発汗です。食欲があるのに痩せてしまうときや、動悸が続くとき、手が震えてしまうとき、他人より暑がりであるとき、原因不明の下痢が続くときなどは、早めに医療機関を受診することをお勧めします。妊娠を計画するときには、甲状腺の状態について医師と相談することが必要です。
残念ながら、バセドウ病に対する予防法は特にありません。疑わしい症状に気づいたら、なるべく早く医療機関を受診しましょう。また、喫煙はバセドウ病眼症の危険因子ですので止めましょう。
解説:荻原 貴之
前橋病院
内分泌・糖尿病内科代表部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。