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2024.10.23
マルファン症候群は、細胞と細胞をつなぐ結合が脆くなり、細胞の形態や細胞内外の運動をサポートする繊維状の細胞骨格が崩れ、大動脈、肺、骨、眼などに症状が現れる病気です。
この病気は遺伝子の変化が原因の常染色体顕性遺伝で、患者さんの子どもが同じ病気になる確率は50%です。患者さんの4人に1人は、親からの遺伝ではなく、本人の遺伝子が突然変異を起こしています。
本人が気づかないうちに病気が進行することがあるので、早期発見・早期治療が重要です。
マルファン症候群は、細胞骨格の強度を維持するのに必要な遺伝子であるFBN1に変異が生じることで発症します。FBN1が変異すると、線維組織やその他の結合組織の一部が変化し、細胞骨格が脆くなります。細胞が通常の形態を保持できなくなり、骨や関節、心臓、血管、眼、肺、中枢神経系などの組織に影響が現れます。代表的な症状として、大動脈瘤、大動脈解離、気胸、骨の変形、視力障害などが挙げられます。
大動脈瘤
動脈が瘤(こぶ)のように膨(ふく)れる病気です。膨れていく段階では自覚症状はほとんどありませんが、大きくなって破裂すると突然、腹痛や胸痛が起こります。心臓に近い部位の大動脈瘤では、息切れ、動悸などが現れる弁膜症(大動脈弁逆流)を合併することもあります。
大動脈解離
大動脈解離は、大動脈壁の一部である内膜が裂けて、大動脈壁だった部分に血液が流れ込む病気です。胸や背中が激しく痛んだり、意識を失ったりすることがあります。
気胸
肺に穴が開いて、外に空気が漏れ、肺が縮んでしまう病気です。急に胸が痛くなる、深呼吸ができないなどの症状があります。
骨の変形
漏斗胸(ろうときょう=胸の中央がへこむ)・鳩胸(胸骨がへこむ、突出する)・側弯症(そくわんしょう=背骨が曲がる)になることがあります。
視力障害
眼球のレンズ(水晶体)がずれ、強い近視・乱視などの視力障害が起こります。
大動脈瘤や大動脈解離、気胸、漏斗胸や側弯症は、主にCT検査で診断して病気の程度を判断します。視力障害(水晶体のずれ)は、眼圧検査や目に帯状の光を当てて細部まで観察するスリットランプ検査などで診断します。
マルファン症候群には根治的な治療法がなく、脆くなった結合組織そのものを正しく修復するのは困難です。そのため、症状に応じて薬や手術、装具などで症状緩和のための処置を行ないます。
大動脈瘤や大動脈解離は多くの場合、人工血管置換術が必要となりますが、瘤の場所や解離の範囲によって手術の方法が異なります。弁膜症を合併していれば、弁形成術や人工弁置換術を同時に行ないます。
気胸に対しては、胸の中に管を入れて空気を外に出す治療や肺の中の原因となっている箇所を一部切除する手術をすることもあります。
重度の視力障害や骨の変形に対しては、手術や体幹装具の使用が必要になります。
骨格の変形や目に異常がある場合や、無症状でも両親のどちらかがこの病気である場合はCT検査を行ないます。命にかかわる合併症を早期に発見して適切な時期に処置することが重要です。
大動脈瘤や大動脈解離は、高血圧症や動脈硬化も一因であるため、一般的に40~50歳以降に起こりやすい病気ですが、結合組織が脆いマルファン症候群では若くして発症することがあります。若いうちからの定期的な検査が必要です。
解説:篠永 真弓
水戸済生会総合病院
副院長 循環器センター長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。