2024.07.17 公開
光視症
photopsia
解説:岩見 千丈 (北上済生会病院 眼科科長 )
光視症はこんな病気
狭義の光視症は、硝子体が網膜を引っ張ることで刺激されて光って見える症状を指しますが、ここではもっと広く、異常な光(ないはずの光)が見える症状について紹介します。これには大きく3種類あり、それぞれ必要な検査や治療は全く異なります。また、異常な光が見える点は共通するものの、それぞれの症状は以下に述べるような特徴があり、どのタイプの光視症かを自分で判断することも可能です。
① 外から目に入った光が原因で見える光視症(Positive dysphotopsia)【図1】
外から入った光が、目の中で異常な反射や屈折をすることで、光っていないはずの視野の一部が光って見えます。白内障の手術で挿入した人工レンズが原因で、明るいところでしか見えません。
診断:これらのことがそろっていれば診断は確定します。
治療:時間が経つにつれて消失することが多いですが、いつまでも続く場合は手術的に治療することがあります。
② 硝子体(しょうしたい)が網膜を引っ張ることが原因で見える光視症【図2】
加齢などの理由で硝子体が液化し、網膜から分離する途中で網膜が引っ張られ、その刺激を光として感じることがあります。目を動かしたときに一瞬、視野の端の方が稲光のように光って見えます。弱い光なので暗いところのほうが見えます。気にしてこすったりすると病状を悪化させる危険があり、網膜剥離の前兆のことがあるため、眼科を受診してください。
診断:目薬で瞳孔を広げて網膜の周辺部まで観察します。
治療:網膜剥離になりそうな変化があれば網膜光凝固を行ないます。すでに網膜が剥離している場合は放置すると失明の危険があるため手術が必要になります。
③ 網膜自体の病気が原因で見える光視症
急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)や多発消失性白点症候群(MEWDS)などの網膜疾患で、視力低下、視野障害に伴って視野がキラキラ光って見えることがあります。このようなときは眼科を受診してください。
診断:光干渉断層計検査などを行ない診断します。
治療:確立した治療方法はありません。治療せず自然に改善することも多いです。
④ 網膜の血流による生理的な光視症(ブルーフィールド内視現象)
生理的な現象で、青空を見ていると小さな光が多数うごめいているのが見えることがあります。これは網膜の血流で注意すれば誰でも見ることができ、病気ではありません。
診断:これらの症状がそろっていれば診断は確定します。
治療:不要です。
⑤ 脳内視覚領野【図3】の一過性の異常によるもの(閃輝暗点)【図4】
一時的に、キラキラした光のようなものやギザギザした光が見えたり、視野の一部が欠けて見えたりする症状で、閃輝暗点【図4】といいます。脳内の視野に関係する部分の神経や血液循環の一時的な障害により引き起こされるもので、通常は両眼の視野で同じように起こります。片目を隠して、両眼で同じように起きているかを確認することができます。一旦起こると数十分程度持続し、ギザギザした光が変化します。消失後に頭痛を伴うことも多いです。脳梗塞の前兆のこともあるため、脳神経外科などでの診察をお勧めします。
診断:症状などが典型的でない場合は、MRI検査などを行ないます。
治療:必要に応じて内服薬で治療します。
⑥ 脳内視覚関連領域の持続的な障害と考えられている現象(Visual snow syndrome)
両眼の全視野に、小さい点が動いて見える現象が3カ月以上続きます。無数の小雪が降る、砂嵐が見える、光って見えるといった症状です。脳内の視覚関連領域の障害が原因と考えられています。
診断:診断基準がありますので、神経内科や眼科で相談しましょう。
治療:確立した治療方法はありません。
解説:岩見 千丈
北上済生会病院
眼科科長
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※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。