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2021.03.17

眼瞼炎 (がんけんえん)

blepharitis

解説:髙橋 直巳 (松山病院 眼科部長)

眼瞼炎はこんな病気

眼瞼炎はまぶたに炎症を起こす病気の総称です。まぶたは外側に皮膚があり、まぶたの縁には睫毛のほか、マイボーム腺という瞼板腺(けんばんせん)、モル腺という睫毛汗腺、ツァイス腺という睫毛脂腺の3つの腺の開口部があります。

炎症が起こる部位がまぶたの外側(皮膚)であれば「眼瞼皮膚炎」、まぶたの縁であれば「前部眼瞼炎」に分類されます。マイボーム腺のある瞼板は比較的奥にも広がっており、マイボーム腺の炎症は「後部眼瞼炎」といいます。
なお、前部眼瞼炎には、「眼瞼縁炎(がんけんえんえん)」や目尻に起こる「眼角眼瞼炎(がんかくがんけんえん)」があります。

眼瞼炎の症状

まぶたの炎症により、発赤、腫れ、疼痛の症状が生じます。炎症が起こる原因として、細菌やウイルスの感染、皮脂の過剰分泌、アレルギーなどが挙げられます。

眼瞼炎の検査・診断

臨床症状や病歴により診断します。

【眼瞼皮膚炎】
1) 感染性眼瞼皮膚炎
単純ヘルペスウイルスや伝染性軟属腫ウイルスの感染、ブドウ球菌による細菌の感染に代表され、ウイルス感染は濾胞性結膜炎(ろほうせいけつまくえん=小さな袋状の構造体である濾胞を伴った結膜炎)を伴うことがあります。

2) 非感染性眼瞼皮膚炎
接触性皮膚炎とアトピー性皮膚炎に代表されます。
接触性皮膚炎は他の部位での原因と同様に、原因物質による遅延型アレルギー反応(アレルギー反応が出るまでに一定の時間がかかること)により皮膚に炎症が起こります。さまざまな原因物質がありますが、化粧品、植物、消毒薬のほか、点眼薬も原因となることがあります。
アトピー性皮膚炎は、小児と成人で特徴が分かれます。小児では眼瞼皮膚炎が強く、角膜や結膜の炎症は軽微ですが、成人では角結膜炎を合併し、円錐角膜(角膜が前方へ円錐状に突出する病気)や、アトピー性白内障などを併発します。

【前部眼瞼炎】
ブドウ球菌の感染によるものが多く、黄色い滲出物の付着や皮膚びらん、睫毛の脱落が特徴的です。

【後部眼瞼炎】
1) 感染性後部眼瞼炎
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と霰粒腫(さんりゅうしゅ)が挙げられます。
麦粒腫はマイボーム腺の急性化膿性炎症であり、霰粒腫はマイボーム腺の慢性的な炎症によって生じる肉芽腫性炎症です。細菌感染を併発した霰粒腫は急性化膿性霰粒腫といいます。

2) 非感染性後部眼瞼炎
マイボーム腺炎とマイボーム腺機能不全がありますが、炎症の誘因として細菌やウイルスが関与している場合もあります。

眼瞼炎の治療法

【眼瞼皮膚炎】
皮膚科での診察、治療が必要です。

【前部眼瞼炎】
ブドウ球菌を想定した抗菌薬の点眼、眼軟膏の塗布を行ないます。

【後部眼瞼炎】
麦粒腫霰粒腫は、抗菌薬の点眼、内服が中心となります。
マイボーム腺炎やマイボーム腺機能不全に対しては、まぶたの縁を清潔にすることや、シャンプー、眼瞼マッサージ、温罨法(おんあんぽう=まぶたを温めること)などによるlid hygiene(脂質を除去し、まぶたを清潔に保つこと)がよいとされています。また、テトラサイクリン系抗菌薬の内服やマクロライド系抗菌薬の点眼での有効性の報告があります。

まぶたの炎症が疑われる症状があれば、眼科の受診をお勧めします。

眼瞼炎は感染性と非感染性に分けられますが、その境界線は曖昧です。そのため、非感染性であっても抗菌薬を使用することがあります。
どの病態であってもまぶたを清潔にすることは、感染のリスクを低下させるので眼瞼炎の予防につながります。

解説:髙橋 直巳

解説:髙橋 直巳
松山病院
眼科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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