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ジストニア

Dystonia

解説:田中 公裕 (済生会唐津病院 神経内科部長)

ジストニアはこんな病気

ジストニアは自分で制御できない(不随意の)持続的な筋肉の収縮をきたし、うねるような運動や姿勢異常が現れる神経症候群と定義されています。他の不随意運動と異なり、ジストニア運動は同じグループの筋肉による反復した運動であることが多いです。パターン化されたうねるような運動で、ふるえもみられます。ジストニアを発症するメカニズムは解明されていませんが、大脳基底核や上部脳幹、小脳など中枢神経が集まる部位において、何らかの障害が起こるためだと推察されています。

ジストニア運動は通常徐々に症状が治まり、眠っているときには症状が軽くなる一方で、ジストニア姿勢異常は睡眠時にも持続します。また、ジストニア運動は安静時にも出現し、歩行、ランニング、書字、会話といった日常活動などにより症状が強くなることもあります。文字を書くときに手がふるえてしまう書痙(しょけい)が有名です。ストレスや疲労により症状が悪化する場合もありますが、ある特定の部位を触れるなど刺激を与えることで症状が緩和することもあります。これを感覚トリックといいます。

ジストニア運動は通常持続性がありますが、症状が現れるタイミングや強さは感情や疲労、リラクゼーションなどの要素により影響を受けます。あるジストニア患者さんは、一日で症状の程度の変動が大きく、午前中にはほとんど症状がみられない一方で、午後から夕方にかけて症状が顕著となり、日常生活に支障をきたすようになりました。
伝統的に、原因がはっきりとしない「一次性ジストニア」と、何らかの疾患に伴い発症する「二次性ジストニア」に分類されます。

【一次性ジストニア】
認知機能の低下や感覚障害などを伴わず、症状が現れる部位により全身性、局所性、分節性、片側性および多巣性に分けられます。最新のガイドラインでは、症状や原因によってさらに細かく分類されます。小児期に発症するジストニアも含まれ、人口10万人に対して約16名が発症するとされています。一方、原因不明とされる「特発性ジストニア」の患者さんが多く認められ、罹患率は小児性のジストニアの約2倍といわれますが、これらの疾患の認知度が低く、過小診断されている可能性があります。

また、遺伝子の影響によって発症すると考えられるタイプに分類されることもあります。近年、一次性ジストニアの遺伝に関して新たな遺伝子が発見され、DYT1ジストニアと呼ばれる疾患は原因の遺伝子を有する患者さんのうち30%に発症することが判明しました。この疾患はユダヤ人の家系に多く認められ、手足から広がる全身性の重症のジストニアを発症します。この疾患は別名オッペンハイムジストニアと呼ばれます。そのほかに、瀬川病ともいわれる「ドーパ反応性ジストニア」や、成人発症の局所性ジストニアに関与する遺伝子なども発見されています。

【二次性ジストニア】
銅の代謝異常である代謝性疾患や神経変性疾患など多種多様な疾患から生じます。主に大脳基底核の疾患であるパーキンソン病やウィルソン病の患者さんにみられ、その他頭部外傷や脳炎脳卒中、脳性まひなど大脳基底核の障害をきたす疾患でも認められます。

また、薬剤の投与が原因で発症する「薬剤誘発性ジストニア」は、抗不安薬や制吐剤を使用する患者さんに認められることが多いです。これらの薬剤には、運動機能を調整するドパミン(ドーパミン)の受容体を阻害する副作用があるためです。 そのほかに、筋肉が強くこわばるなどの症状がすぐに現れる急性ジストニア、内服開始からかなりの期間をおいて発症する遅発性ジストニアもあり、その反応には多様性があります。

ジストニアの症状

先に述べたように、さまざまな部位または範囲で不随意運動が起こります。

【全身性ジストニア】
足や手に現れた不随意運動が徐々に他の部位に広がります。体幹部がねじれたり反り返ったりする症状がみられ、小児期に発症するケースもあります。

図:体幹部や脚部がねじれ、まっすぐ立つことができない
脚部や体幹部がねじれ、まっすぐ立つことができない

【局所性ジストニア】
身体の一部に不随意運動が起こります。両眼のまぶたが閉じてしまう眼瞼(がんけん)けいれんをはじめ、首が勝手に傾いてしまう痙性斜頸(けいせいしゃけい)などがあります。書痙のようにある特定の活動や作業のときにのみ出現するものもあります。

図:代表的な局所性ジストニア
代表的な局所性ジストニア

ジストニアの治療法

【全身性ジストニア】
若年発症のジストニア患者さんには、パーキンソン病治療に使われているレボドパ製剤という薬を用いた治療が試みられます。一日の中で症状の程度が変化するドーパ反応性ジストニアではレボドパ治療が効果的ですが、ある一定量のレボドパ製剤を投与しても効果がない場合には、ドーパ反応性ジストニアではないと考えられます。
次の処方の単独または組み合わせにより、症状の緩和が認められることがあります。

①トリヘキシフェニジル
一日2mgから服用し、適宜増量します。急性のジストニア反応にも有効です。
②クロナゼパム、ジアゼパム
筋弛緩効果があり、副作用として眠気が起こりやすいです。
③カルバマゼピン
てんかんの治療薬で、全身性ジストニア、特に突然発症する「発作性ジストニア」に有効です。
④バクロフェン
中枢性筋弛緩薬で、特に脳性まひなどが原因のジストニアに有効です。重度の体幹・下肢のジストニア患者さんに対して、皮下に装着されたポンプからこの薬剤が持続して髄液内に注射されることがあります。
⑤テトラベナジン
不随意運動を抑える薬で、副作用としてパーキンソン症状や抑うつをきたすことがあります。

1~5の薬剤治療で効果が得られなかった場合、電気で神経を刺激し細胞活動を抑制する深部脳刺激治療が行なわれることがあります。

【局所性ジストニア】
眼瞼けいれんや痙性斜頸、書痙といった局所性ジストニアの治療では神経毒であるボツリヌス毒素を不活化した局所注射が行なわれます。この治療は2~4ヵ月程度で効果がなくなるため、その都度治療を繰り返さなければなりません。患者さんの中にはボツリヌス毒素に対する抗体が生成され、治療効果が弱まり注射量を増やす必要がある人もいます。

早期発見のポイント

疑わしい特徴を持つ不随意運動や姿勢異常が認められたときは、神経内科医に相談することをお勧めします。
ジストニアかどうかを判断するには、筋骨格の障害または心理的な障害ではなく、神経障害として不随意運動や姿勢異常が起きているのを確認することがまず必要です。

病院では、二次性ジストニアかどうかを判断するため頭部や頸部の画像診断を行ない、若年発症または家族に発症した人がいるジストニア患者さんの場合、遺伝子検査を行ないます。
心理的な原因で引き起こるジストニアと身体的異常が原因で引き起こるジストニアを鑑別する検査がないため、初診で心因性ジストニアと診断される患者さんが多いなど、ジストニアの診断は困難な点も多いのですが、先述の治療により症状を軽減することも可能です。

予防の基礎知識

ジストニアの予防は診断と同様に難しいため、発症後できる限り早期に受診し、治療に結びつけることが重要と考えられます。不随意運動や姿勢異常がみられることから、他人からも気づかれやすいともいえます。本人はもちろん、周囲の人が気づいたら神経内科の受診を勧めてもらえれば幸いです。

田中 公裕

解説:田中 公裕
済生会唐津病院
神経内科部長

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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