2014.01.31 公開
2025.07.29 更新

甲状腺機能低下症

hypothyroidism

監修:南 太一 (横浜市南部病院 糖尿病・内分泌内科 主任部長代行)

甲状腺機能低下症はこんな病気

甲状腺は喉(気管)の前にある臓器です。通常は表面から触れることはありませんが、機能異常を示す疾患や腫瘤(しゅりゅう)ができると、触知(しょくち/触れてその存在を認識すること)されるようになることがあります。甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌し、身体の代謝を司るなくてはならない臓器です。そのためこの機能が低下すると、身体に対して悪影響を与え、さまざまな症状が現れるため、しばしば診断が困難になる場合があります。また、妊娠に対する影響もあるため、治療が必要になります。

甲状腺機能低下症の原因

成人が甲状腺機能低下症となる原因のほとんどは、甲状腺そのものの働きが低下することで起こる「原発性甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)」です。その原因の多くは「橋本病」によるものです。
橋本病とは、甲状腺を攻撃する自己抗体を作り出すことによる疾患です。日本で施工された調査研究によると、男性の7.7%および女性の15%が甲状腺自己抗体が陽性であると報告があり、非常に有病率の高い疾患となっています(出典:「International Journal of Epidemiology」)。そのほとんどは抗体が陽性になるのみで、機能は正常なまま経過しますが、機能低下になる例があるため注意が必要です。
そのほか、甲状腺の手術後、頚部放射線治療後、抗甲状腺薬などによる薬剤が原因によるものや、先天性、無痛性甲状腺炎が治る途中の一時的なものといった特殊な状態もあります。

甲状腺機能低下症の治療法

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモン(TSH、FT3、FT4)測定により、2つに分類されます。TSHが高い値を示し、FT4(FT3)が低い値を示す状態を「顕性甲状腺機能低下症(けんせいこうじょうせんきのうていかしょう)」。TSHが高い値を示し、FT4(FT3)が正常な状態を「潜在性甲状腺機能低下症(せんざいせいこうじょうせんきのうていかしょう)」と分類します。
顕性甲状腺機能低下症は、すべての例が治療対象となります。潜在性甲状腺機能低下症は議論の余地がありますが、TSHが10μIU/ml以上の場合は治療対象となります。最近では、TSHが正常とされる上限値から10μIU/mlまでの症例であっても、コレステロール値の高い方をはじめ、妊娠中や妊娠希望のある方、不妊治療を行なう予定の方は、治療対象になり得ます。
治療法は甲状腺ホルモン剤の内服です。定期的に甲状腺ホルモンを測定しながら、それぞれの方に合わせた必要な量を設定していきます。甲状腺ホルモン剤は副作用がほとんどなく、一日一回の服用で十分な、安心して飲める薬であるため、内服を開始したら医師の指示通りに服用しましょう。

早期発見のポイント

甲状腺機能低下症の自覚症状は多彩です。一例を挙げると、無気力になった、疲れやすい、寒がりになった、集中力がなくなった、体重の増加むくみやすくなった、便秘になったなどです。ただ、こういった症状はすべての人に現れるわけでなく、ほかの疾患でも出現するため、その原因が甲状腺機能低下症によるものであるということが判明するまで、時間がかかることがあります。
しかし、一度甲状腺機能低下症だと疑えば、甲状腺ホルモン測定により容易に診断がつきます。
最近では、健診の普及により、一般的な採血検査で、コレステロール上昇などの異常値や甲状腺腫大をきっかけに発見されることがあります。
いずれにせよ、甲状腺機能異常を疑った場合は、専門医を受診してみることが大切です。

監修:南 太一
横浜市南部病院
糖尿病・内分泌内科 主任部長代行


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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