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2015.01.07
下肢潰瘍(かしかいよう)とは、さまざまな原因によって引き起こされる、治すことが難しい下肢の皮膚潰瘍です。主に以下の種類があります。
1 動脈性下肢潰瘍
足や手の動脈が、動脈硬化症によって狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなることで、さまざまな症状をひき起こす病気をPAD(末梢動脈疾患)といいます。このPADが原因による潰瘍です。症状が進んで下肢の血流が悪くなると、小さな傷でも治らなかったり、壊死をきたしたりしてきます。
2 静脈性下肢潰瘍
下肢の主な静脈は、深部静脈系と表在静脈系から成り立ち、細い血管がその2つをつないでいます。これらの静脈系の弁に機能不全が生じると、深部静脈血が表在静脈と皮下組織に逆流し、静脈瘤や皮膚障害をきたしてきます。主に、足の関節部周囲に発症します。
3 神経障害性下肢潰瘍
糖尿病の3大合併症の一つである神経障害が原因で起こる潰瘍です。神経障害には、知覚神経障害、運動神経障害、自律神経障害があります。
(1)知覚神経障害
初期症状では「痛み」「しびれ」などの異常感覚が現れ、病状が進展すると感覚低下をきたします。そのため、靴擦れ、タコ、熱傷などの傷ができても、本人が自覚できないことから、医療機関への受診が遅くなりがちです。
(2)運動神経障害
足の筋肉が委縮し、外反母趾などさまざまな足の指の変形が起こります。そのため、靴擦れなどが原因となり、変形を起こし、変形部位に潰瘍を生じることが多いです。
(3)自律神経障害
汗腺機能が障害され、発汗が減少し、皮膚が乾燥します。そのため皮膚に亀裂が生じ、傷ができやすい状態になります。また、骨の吸収が促進され、荷重のかかる部位の骨と関節が簡単に破壊されてしまい、足の変形をきたして潰瘍を生じます。
4 その他
膠原病、悪性腫瘍などが原因による潰瘍があります。
それぞれのタイプによって、特徴的な症状が現れます。
1 動脈性下肢潰瘍
PAD(末梢動脈疾患)になると、以下2点の症状が出ます。
・夏でも靴下を履かないと足が冷たく、足先に血の気がない。いいます
・しばらく歩くと足に痛みやしびれを生じ、少し休むとまた歩けるようになる。
(間欠性跛行<かんけつせいはこう>といいます)
症状が進行すると、安静時でも足に痛みを生じます。
2 静脈性下肢潰瘍
・足の血管がふくらんでいる。
・足関節部周辺がむくむ、黒ずんできた。
3 神経障害性下肢潰瘍
神経障害が進行すると、以下の症状が出ます。
・魚の目、タコができている。
・足の裏の皮膚がカサカサで、ひび割れがある。
・足の指が変形している。
動脈性下肢潰瘍の患者さんの生命予後は、悪性疾患に匹敵するほど悪いです。しかし、直接の死因は下肢の潰瘍ではなく、40%~60%が狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患が原因といわれています。動脈硬化は、手足の血管だけにとどまらず、全身の血管に生じるためです。
そのため、PAD(末梢動脈疾患)症状がある患者さんは、動脈硬化の進行を予防することが大切です。内科を受診し、高血糖、高血圧、高脂血症、肥満といった生活習慣病を早期に発見し、適切な治療を受けましょう。
また、潰瘍が治癒しても、再発の可能性が常にあります。毎日足を観察し、患者さん自身が足に関心を持ってもらうことが重要です。その上で適切な装具の作成、日々のフットケアを行ない、再発予防に努めましょう。
解説:南方 竜也
大阪府済生会野江病院
形成外科部長・創傷治癒センター長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。