2014.03.12 公開
2025.07.29 更新

肺がん

lung cancer

解説:濱本 泰 (今治病院 放射線科 非常勤医師)

肺がんはこんな病気

肺がんは、肺の組織から発生した「原発性肺がん」と、大腸がん乳がんなど、ほかの臓器にできたがんが肺に転移した「転移性肺がん」に分類されます。単に肺がんという場合は、「原発性肺がん」を指すのが一般的です。ここでは、原発性肺がんについて解説します。(「肺がん」=「原発性肺がん」)

日本の部位別のがん死亡数では肺がんが1位となっており、国をあげて研究や対策に取り組む必要がある疾患といえます。早期肺がんでは無症状のことも多く、進行するにつれて咳や痰が増える、血痰(血が混じった痰)が出る、胸が痛む、少し動いただけで動悸(どうき)や息切れがする、発熱が続く、などの症状が出てきます。肺がんの原因として重要なのが喫煙です。「1日の喫煙本数×喫煙年数」の数値が大きいほど、肺がんになるリスクが高くなります。また、自分が喫煙していなくても、受動喫煙により、発がんのリスクは増すとされています。ちなみに、喫煙は肺がんだけでなく、ほかのがんも引き起こすことが知られています。
肺がんの多くは、初期には発生部位(原発巣)にとどまっていることが多いのですが、次第に周囲のリンパ節に転移するようになり、さらには、肺内の別の場所や骨、肝臓、脳、副腎など別の臓器に遠隔転移を起こすようになります。

肺がんは、細胞の種類により大きく二つに分類されます。肺がんの10~20%を占め、増殖が速くて転移を起こしやすい「小細胞肺がん」と、それ以外の80~90%を占める「非小細胞肺がん」で、それぞれに適した治療が行なわれます。

非小細胞肺がんの治療法

早期肺がんは、発生した部位の近くにとどまっており、手術で完全に取りきれることが多いため、一般に手術の対象となります。原発巣が大きかったり、近くのリンパ節への転移がみられたりした場合には、必要に応じて手術前後、もしくはその両方で抗がん剤治療と免疫チェックポイント阻害剤が投与されることもあります。

早期肺がんであっても高齢であったり、重い合併症を抱えていて手術が難しい患者さんに対しては、放射線治療や薬物療法が行なわれます。手術が難しい患者さんでも、原発巣が小さく、リンパ節転移がない場合には、肺がんを正確に狙って非常に強い放射線をピンポイント照射する定位放射線治療により、良好な治療成績が得られています。

肺がんが少し進行して手術で取り切れるかどうか微妙な時は、術前に薬物療法を行ない、がんを小さくしてから手術を行なうこともあります。手術による十分な効果が期待できないと判断される場合は、放射線治療や薬物療法が行なわれます。手術で取り切れるかどうかの判断が難しい状態の患者さんについては、呼吸器外科、呼吸器内科、放射線治療科の医師がよく相談して治療方針を決めていきます。

遠隔転移はないものの、肺がんが周囲の臓器へ入り込んでいたり、胸の中のリンパ節へ転移していたりして、手術では完全に取り除くことが難しい局所進行肺がんには、一般的に放射線治療を中心とした治療が行なわれます。比較的全身状態が良い患者さんには、放射線治療と抗がん剤を同時に投与する強力な治療を行ないます。放射線治療と抗がん剤による治療が終わった後、病状が落ち着いていれば、免疫チェックポイント阻害剤による地固め治療を追加することで、さらに治療成績が向上します。

遠隔転移がある場合は、薬物療法が中心となります。従来の抗がん剤に加えて、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など新しい薬が次々開発され、日常診療でも使用されるようになっています。骨転移の強い痛みは、放射線治療で緩和することができます。放射線治療は、脳転移、肺がんからの出血、肺がんによる気管支や大血管の狭窄などに対しても有効です。薬物療法や放射線治療をうまく使うことにより、たとえ進行がん(がんが発生した部位から広がったり、大きくなったりしている状態)であっても、生活の質を保ちながら過ごすことができている患者さんがたくさんいます。

小細胞肺がんの治療法

小細胞肺がんには、「増殖が速く、リンパ節や他臓器に転移を起こしやすいけれども、抗がん剤が比較的よく効く」という性質があります。そのため、薬物療法が治療の中心となります。放射線も比較的効きやすいため、病巣が胸部の比較的狭い範囲にとどまっている場合には、抗がん剤治療と放射線治療が併用されます。
これらの治療が有効であった場合、さらに免疫チェックポイント阻害剤による地固め治療を追加すると治療成績が改善します。 明らかなリンパ節転移がない初期の小さな小細胞肺がんには、手術と抗がん剤治療が行なわれることもあります。
小細胞肺がんは、脳に再発しやすいという性質があるため、胸部の病変が制御でき、新たな転移がみられない場合、予防的に脳に放射線照射を行なうことがあります。

遠隔転移がある場合は、抗がん剤治療を行ないます。全身状態が良い場合は、さらに免疫チェックポイント阻害剤も併用します。非小細胞肺がんと同様に、骨転移や脳転移、その他の生活の質を低下させる病変がある場合は適宜、症状の緩和を目的とした放射線治療を加えます。

早期発見のポイント

肺がんによる症状として、以下が多く見られます。

1 せきが続く(1カ月近く経ってもよくならない)
2 血痰が出る
3 胸の痛みが続く
4 歩行、肉体労働時などに息切れする
5 体重減少発熱が続く、倦怠感がある
6 肺炎を繰り返す

しかし、これらは肺がんのみに該当する症状ではありません。また、転移を伴う肺がんの場合は、転移した先の臓器の症状も伴うため、さまざまな症状が見られます。
注意しなければならないのは、早期の肺がんは多くの場合、自覚症状がないということです。したがって、早期発見するためには、肺がん検診が重要と考えられています。
現在、肺がん検診では、胸部X線写真(レントゲン写真)が推奨されています。さらに、「1日の喫煙本数×喫煙年数」の数値が400~600以上の人には、胸部X線写真と、痰の細胞検査の併用が推奨されています。
そのほか、CTによる肺がん検診も行なわれています。CTによる肺がん検診は、小さい肺がんを発見する能力には優れているものの、撮影に伴う放射線被ばく量が大きいこと、過剰診断の弊害があること(治療の必要がない病気まで見つかってしまい、患者さんに心理的・経済的負担をかけてしまう)、CT検診の効果自体が不明、などといった理由で現在は希望者だけに行なわれています。

肺がんかなと思ったら

せきや血痰が続き、肺がんが心配な時には、呼吸器内科医がいる病院を受診しましょう。かかりつけの内科医がいる人は、まずはかかりつけ医を受診して、診察や胸部X線写真撮影を受けた上で、指示を仰いでもよいでしょう。肺がん検診で精密検査が必要といわれた場合には、必ず指示にしたがって精密検査を受けてください。

予防の基礎知識

予防法としてまず挙げられることは、「喫煙しない」ということです。喫煙習慣がある人は、禁煙することから始めましょう。さらに、喫煙しないことは、ほかのさまざまな部位のがんの予防にもつながります。また、一時期「β-カロチン」が肺がんを予防する、という効果が注目されました。しかし、喫煙者がサプリメントなどで大量に摂取すると、逆に肺がんを発症するリスクが増すという報告があるので、注意が必要です。
がんが発生するメカニズムは、まだ十分には解明されていません。したがって、肺がんに限らず「こうすれば絶対にがんにはならない」といった予防法はありません。肺がんに関しては、まず喫煙をしない、そして定期的に肺がん検診を受ける、といったことが大切だといえます。

濱本 泰

解説:濱本 泰
今治病院
放射線科 非常勤医師


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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