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2023.12.06
骨形成不全症は、生まれつき骨がもろく弱いため、骨の変形や骨折が起こりやすくなる病気です。白目の部分(強膜)が青い、歯の形成が不十分、難聴などの症状がみられることがあります。
9割以上の患者さんが、骨の主な成分であるI型コラーゲンの遺伝子異常が原因で、このI型コラーゲンの異常の程度により重症度が変わってくると考えられています。発症頻度は2万人に1人程度とされています。
生涯にわたり明らかな症状のない軽症例から、生後まもなく死亡する重症例まで、症状の程度は幅広く多彩です。I型コラーゲンは結合組織の成分にもなるため、骨および結合組織全般に症状が現れます。
① 骨の脆弱性(もろさ、弱さ)によるもの
軽い力でも簡単に骨が折れるため、骨折を繰り返します。骨の変形は進行性で、年長期以降は骨の変形による骨痛(こつつう=骨に起こる疼痛)や、背骨がねじれて左右に曲がる側弯、胸郭の変形などが生じます。骨の弱さは大人になった後も続き、妊娠・出産・加齢に関連した悪化が考えられます。
② 歯牙(象牙質)形成不全
歯の色調の異常(光沢のない灰色の歯)や象牙質(エナメル質の内側にある歯の主成分)の損傷が起こりやすく、特に乳歯の方が永久歯より障害されやすいです。
③ 青色強膜
コラーゲン合成の異常が原因で強膜が異常に薄くなり、その下にある静脈が透けるため、青く見えます。
④ 難聴
耳の奥にある骨の変形や骨折などが原因です。小児の患者さんで5%、50歳までに50%の患者さんが難聴になるとされています。
⑤ 心臓弁膜症
成人を過ぎると、左心室が収縮するときに僧帽弁の弁尖が左心房内に突き出てしまう僧帽弁逸脱や、大動脈基部拡張が多くみられます。
⑥ 神経症状
頭部が大きい状態になる大頭症・水頭症がしばしばみられます。知能は正常です。
⑦ その他の結合組織病変
過度に関節が柔らかく曲がったり、皮膚が伸びやすく弾力性の低下がみられたり、関節脱臼や肘内障(ちゅうないしょう=肘の亜脱臼)、毛細血管の弱性による皮下出血、小腸などの内臓が足の付け根に飛び出す鼠経(そけい)ヘルニア、へそが膨らんでくるへそヘルニアなどの症状が現れます。
骨のX線検査、腰椎骨密度測定を行ないます。さらに正確な診断のために遺伝子検査を追加することもあります。遺伝子検査は、診断が難しい軽症例でも確定診断が可能になり、予後や合併症を知るためにも必要です。
薬物療法
「ビスホスホネート製剤」を使います。骨粗鬆症の治療薬として広く使われている薬で、骨を強くして骨折頻度を減らし、骨の痛みを和らげるのに役立ちます。小児では周期的な静脈内投与が行なわれていますが、年長児や成人では経口の薬で治療します。
外科的治療
骨折したときの治療は保存療法と手術療法があり、通常は保存療法が行なわれます。神経などに損傷がないことを確認し、ギプスなどで固定します。しかし折れた骨が変形したり、成長しなくなったりすることがあるため、骨折の多い小児では、身体の成長が阻害されて身体の変形がみられることがあります。四肢を構成する長い骨の骨折や変形予防のために、骨の中に入れる金属棒(髄内釘)による固定が必要になることがあります。ただ、側弯症に対しては装具の効き目はなく、高度の側弯には「矯正固定手術」を行なうことがあります。
難聴の治療
補聴器や人工内耳などの装置を使用することがあります。
乳児や小児で「打撲の形跡はないが骨折している」「2回以上の骨折歴がある」といった場合は、骨形成不全症かもしれません。軽症例では、おむつ替えや初めての立位、歩行などの通常活動で初めて骨折し、その後も骨折を繰り返します。抱き上げたり寝かしつけたりするときに、触れると泣く、身体の一部を動かそうとしない、などの場合は骨折している恐れがあります。また、X線検査によって、骨の異常(複数の骨折や骨の変形)が見つかり、骨形成不全症が疑われることがあります。親のどちらかに同じ病気がある場合は、遺伝子検査による診断が勧められます。
なお、最重症で新生児期に死に至るケースは、多数の骨折がある状態で生まれます。出生前に妊婦の超音波検査で発見される場合があります。
骨形成不全症に起こる合併症のほか軽いけがでも予防や早めの対策をとり、骨折のリスクを減らすようにしましょう。
骨と筋肉量を維持するためには、安全で日常的な運動が好ましいです。水泳や歩行運動は骨形成不全症のすべての年齢層に適切な運動とされています。
さらに、適切な栄養摂取も重要です。過剰摂取に注意しながら、骨の強さを維持するためにビタミンDやカルシウムなどを意識的に摂り入れましょう。
ただ、肥満・体重過多は骨、筋肉、心臓、肺にストレスをかけて身体の動きを妨げるため、体重維持にも気をつけましょう。
また、小児期から聴力検査を定期的に行ない、聴覚低下の出現をモニタリングして難聴への対策を迅速に行なえるようにしましょう。
解説:岩本 眞理
横浜市東部病院
院長補佐 こどもセンター長 総合小児科専門部長
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