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2023.08.30
多血症は血液中の赤血球が異常に増加する病気で、赤血球に含まれるタンパク質であるヘモグロビンの値やヘマトクリット(血液中に占める赤血球の割合)が高くなります。
循環赤血球量(血管内を循環している赤血球の量)が増加する「絶対的多血症」と、循環赤血球量は増加しないものの脱水などによって循環血漿量(血管内を循環している血漿の量)が減少することで、見かけ上の赤血球の増加を示す「相対的多血症」に大別されます。
絶対的多血症を起こす原因は二つに分けられます。
一つ目は、骨髄の中で、血球(白血球・赤血球・血小板)の種の細胞である造血幹細胞の異常により、赤血球の産生が過剰になるためです。これを「真性多血症」といいます。真性多血症のほとんどの症例で、JAK2(血液細胞の増殖など細胞内シグナル伝達の中心的役割を担う酵素)の遺伝子変異がみられます。
二つ目は、赤血球を作るホルモンのエリスロポエチン(EPO)の増加により、赤血球の産生が過剰になるためです。EPOが増える主な原因としては、低酸素血症(血液中の酸素が不足した状態)やEPO産生腫瘍(本来EPOが作られる腎臓とは別の場所の腫瘍からEPOが異常に作られる状態)があります。低酸素血症は呼吸不全や心不全、睡眠時無呼吸症候群などによって引き起こされ、EPO産生腫瘍は腎細胞がん、肝細胞がん、髄膜腫などによって引き起こされます。
相対的多血症を起こす原因としては、脱水、ストレス(ストレス多血症)、喫煙があります。
自覚症状として頭痛、めまい、倦怠感などがありますが、無症状のことも多く健康診断などで指摘されることもしばしばです。
真性多血症では赤ら顔、結膜充血、皮膚瘙痒症、肢端紅痛症(したんこうつうしょう=足や手が熱くなって痛みが生じ、皮膚が赤くなること)、脾腫(ひしゅ=脾臓が腫れて大きくなる症状)がみられます。
まず問診では喫煙歴のほか、睡眠時無呼吸症候群、呼吸器疾患や心疾患などの病歴を確認します。次に脱水の有無、脾腫の有無、経皮的動脈血酸素飽和度(末梢動脈内のヘモグロビンに結合した酸素量の目安)をみて低酸素状態の有無を調べます。また、血液検査で血清EPOの値やJAK2遺伝子変異の有無を確認します。
真性多血症の確定診断には、針を刺して骨髄液を採取する骨髄穿刺(せんし)や骨髄生検が必要です。EPO産生腫瘍を疑う場合は、頭部CTや腹部CT、超音波検査などの画像検査による精査が必要となります。
絶対的多血症のうち真性多血症では、血管に血の塊(血栓)が詰まる血栓症の予防が治療として最も重要です。60歳以上の人や血栓症の既往歴がある人など血栓症のリスクが高い患者さんには、血液を抜き取る瀉血(しゃけつ)療法と低用量アスピリン療法に加えて、薬で血液細胞の数を減らす細胞減少療法を行ないます。血栓症のリスクが低い患者さんには、瀉血療法と低用量アスピリンの療法を行ないます。
相対的多血症では、脱水には水分を補充し、喫煙者は禁煙、肥満者は減量を行なうほか、過度なストレスを避けるようにします。
頭痛、めまい、赤ら顔、皮膚瘙痒症、脾腫などの多血症の症状があるときは、血液検査をしてヘモグロビンやヘマトクリットの値を確認しましょう。
また、無症状のケースも多いため、早期発見のためには定期的に健康診断を受けることも大切です。
絶対的多血症の真性多血症は予防が難しいですが、血栓症を予防することが最も重要です。
相対的多血症は、喫煙している場合は禁煙を、肥満の場合は減量を心がけ、脱水症にも注意するようにしましょう。
解説:澤﨑 愛子
福井県済生会病院
内科部長
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