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2022.02.09
リウマチ熱は、A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染後の免疫反応によって起こる炎症性の合併症です。まれにみられる病気で、近年の日本では減少しており、年間数例程度の報告となっています。5~15歳くらいの子どもに多くみられます。
溶連菌感染症は一般的には咽頭扁桃炎、すなわち風邪のような症状のことが多いです。溶連菌に感染した人のごく一部しかリウマチ熱を発症しないので、発症しやすい体質があるとされています。溶連菌感染を起こしてからリウマチ熱発症までの期間は2~3週間のことが多いですが、数カ月のこともあります。
関節炎、心臓に関する症状、神経に関する症状、発熱、皮膚にみられる症状などさまざまです。
最も多いのが関節炎で、痛みが複数の関節に同時に起こり、それが移動するのが特徴です。
心臓に関する症状は、心臓に炎症が起こることで生じます。特に心臓内の弁に炎症が起こることが多く、炎症が強いと弁の閉鎖が不十分になり血液の逆流が生じます。このことにより、これまでになかった心雑音が聴こえるようになり、ひどくなると心不全の症状が起こります。リウマチ熱の心臓の炎症は後遺症を残すことがあるため、注意が必要です。
神経に関する症状は、自分の意思とは関係なく身体が動いてしまう不随意運動といわれるものです。踊りのような動きのため、舞踏病と呼ばれます。舞踏病にはいろいろな症状がありますが、話し方が少しおかしいなどの場合、小児では分かりにくいこともあります。
皮膚にみられる症状は、輪状紅斑(輪のような形の赤い発疹)や皮下結節(皮膚の下の小さいしこり)といわれる特徴的なものです。発生頻度は少ないですが、これらがみられた場合はリウマチ熱を発症している可能性が高くなります。
まず、溶連菌感染を証明するために咽頭の培養(咽頭の粘液を採取し菌の有無を調べる検査)や溶連菌抗原の迅速検査、あるいは血液の抗体の上昇を調べます。また、血液検査では炎症反応を示す数値(C反応性タンパク:CRPなど)が上昇することが多いです。さらに、心臓の合併症の有無を調べるため、心電図や心エコー(超音波)検査を行ないます。これらの検査結果と症状の組み合わせから診断します。
原因となっている溶連菌に対する抗菌薬治療と、炎症をおさえるための抗炎症薬治療が中心になります。抗菌薬は溶連菌に有効とされるペニシリン系を使用します。炎症をおさえるためにはアスピリンなどの抗炎症薬を使用します。
心臓の炎症が強い場合は、副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)を使用します。また、心不全の症状が強ければそれに対する治療も行ないます。
リウマチ熱は日本では減少していて珍しい病気であること、症状が多様であることから、診断までに時間がかかることがあります。特に典型的な症状がそろわない場合には診断が難しいです。また、リウマチ熱による舞踏病が起こる場合、溶連菌感染症を発症してから数カ月後のこともあり、リウマチ熱の症状が出たときには溶連菌感染の症状がなくなっていることがあります。数カ月以内に溶連菌感染症と診断されたことがあれば、受診の際に伝えるようにしましょう。
溶連菌感染症自体は珍しい病気ではなく、感染者のうちリウマチ熱を起こす人はごく少数なので、心配しすぎる必要はありません。ただし、溶連菌感染症と診断されて抗菌薬を処方された場合は、自己判断で中止せずにしっかり飲むようにしてください。
また、一度リウマチ熱にかかった人は、再発を繰り返す傾向があります。特に心臓の炎症が強かった場合は注意が必要です。再発により心臓の弁の逆流(閉鎖不全)が進行することが多いため、再発を予防することが重要になります。再発予防には抗菌薬の治療を継続する必要があり、長期にわたって内服するのが一般的です。
心臓の後遺症の程度によっては、弁の手術が必要になることがあります。後遺症が軽度と思われていても、自分で気づかないうちに弁の逆流が進行していることもあります。医師の指示に従い定期的に診察を受け、必要に応じて心不全のための治療を検討した方がよいでしょう。
解説:塩野 淳子
茨城県立こども病院
小児専門診療部長
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