2019.05.29 公開
子宮体がん
Uterine Corpus Cancer
解説:平木 宏一 (済生会長崎病院 産婦人科部長)
子宮体がんはこんな病気
子宮は解剖学的に子宮体部と子宮頸部に分けることができます。子宮体部の子宮内膜は月経によりはがれ落ちる部位で、この内膜から発生するのが子宮体がんです。子宮体がんはエストロゲンという女性ホルモンと関連が深く、子宮内膜増殖症という前がん病変(放置すると後々がんになる確率が高い状態)を経て発症します。未産婦、月経不順やエストロゲンのみのホルモン補充を受けている方が罹患しやすくなります。また、閉経後に発症するものもあり、これは発症のメカニズムが異なっていると考えられます。肥満や高血圧、糖尿病はリスク因子とされています。

子宮
子宮体がんの症状
最も多い症状は不正性器出血(月経以外で腟や子宮から出血すること)です。閉経前後にかかわらず、不正性器出血がある場合は子宮がん検診が必要です。閉経前でも発症することは先に述べたとおりで、特に未産婦や月経不順、乳がんの既往のある方は発症リスクが高いとされています。不正性器出血のほかに、排尿時や性交時の痛みも現れることがあります。
子宮体がんの診断と治療
子宮体部のがん検診は、子宮口から細いスティック状の検査器具を子宮腔に挿入し、子宮内膜の細胞を採取します。検診で異常がみられた場合、子宮内膜の組織を採取して詳しく調べ、診断が確定します。
子宮体がんの治療は手術が基本です。子宮・卵巣・卵管・後腹膜リンパ節を摘出する手術が適応されます。ある条件の下では、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術を保険診療の範囲内で選択することも可能です。診断された時点で手術により完全に摘出できないほどがんが進行している場合は、化学療法や放射線治療が選択されることもあります。若年者で子宮温存の希望がある方にホルモン療法を行なうことがありますが、初期の子宮体がんに限られるなど、一定の条件を満たした場合に選択可能な治療法です。
早期発見のポイント
年齢にかかわらず、不正性器出血がある場合にはがん検診のため産婦人科を受診しましょう。閉経前でもお産の経験がない方や肥満、月経不順、乳がんの既往のある方は注意が必要で、高血圧や糖尿病もリスク因子となります。
予防の基礎知識
明らかな予防法は存在しませんが、先述の肥満や高血圧、糖尿病などリスク因子を減らしておくことは、この病気の予防だけでなく、明日の健康にもつながると考えられます。
解説:平木 宏一
済生会長崎病院
産婦人科部長
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※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。