2014.03.19 公開
2025.10.30 更新
気管支喘息
bronchial asthma
監修:清益 功浩 (中津病院 小児科 免疫アレルギーセンター部長)
気管支喘息ってこんな病気
気管支喘息は、呼吸する際の空気の通り道である気道にアレルギー炎症が生じた結果、さまざまな要因で気道が過敏に反応して気道収縮を起こし、気道の内腔が狭くなって、呼吸困難を起こす病気です。気道が過敏に反応する要因としては、以下が挙げられます。
・ウイルス(ライノウイルス、RSウイルス)、マイコプラズマ、クラミジアなどの呼吸器感染症)
・冷たい空気や乾燥した空気
・アレルゲン(ホコリ、ダニ、カビ、ペットなど)
・煙(タバコ、空気汚染、黄砂、PM2.5など)
・精神的なストレス
子どもに多い「アレルギーマーチ」の一つ
気管支喘息は、子どもによく見られるアレルギー疾患の一つでもあります。遺伝や環境が要因でアレルギーにかかりやすい体質の子どもは、乳児期早期から①乳児湿疹・アトピー性皮膚炎、②食物アレルギー、③気管支喘息、④アレルギー性鼻炎・花粉症などを発症する場合が多いです。
アレルギー体質の子どもが①~④の順ですべて発症するとは限りませんが、アレルギーの病気が次から次へ変わっていくように見えるため、この現象は「アレルギーマーチ」と呼ばれています。乳児期初期にみられる乳児湿疹により、皮膚バリア障害が起こって、バリアをすり抜けたアレルギー物質(アレルゲン)によってアレルギー反応(アレルゲン感作)が起こり、その後のアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息と言ったアレルギーマーチに発展する症例の報告が増えています。
アレルギーマーチの発展を阻止するためには、乳児期初期の湿疹を早期に治療し、スキンケアなどで皮膚バリア障害を予防していくことが重要です。乳児湿疹の症状が見られた場合は、早めに医師の診断を受けて治療を行ないましょう。
気管支喘息の症状
気管支喘息の症状は、主にせき、痰、喘鳴(息をするときにゼーゼー、ヒューヒューと鳴る)、またそれらによる呼吸困難などで、こうした症状を起こすことを喘息発作といいます。気管支喘息では、この喘息発作を繰り返すことになります。繰り返す原因として、喘息発作のない状態でも気道にはアレルギー炎症が残っており、その状態で発作を起こす要因が発生すると喘息発作が起きる流れになります。また大きな喘息発作が起きてしまうと、気道がふさがってしまい、呼吸ができず、最悪死に至るケースもあります。
気管支喘息の治療法
気管支喘息の治療は、喘息発作を抑えるための治療と、喘息発作を繰り返す状態を防ぐための長期管理の治療があります。喘息発作に対する治療は、気管支を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬の吸入が中心で、長期管理の治療はアレルギー炎症を抑える吸入ステロイド薬が中心になります。長期管理の治療では、喘息発作の頻度に応じて、①吸入ステロイド薬の量を調節する、②気道を収縮させるロイコトリエンの働きを抑える抗ロイコトリエン薬を使用する、などの方法があります。
加えて、炎症やアレルギー症状などのアレルギー炎症に関わる物質(サイトカイン)の働きを抑える抗体(生物学的製剤)を使用し、喘息発作が起きない状態を維持することが大切です。運動したり、笑ったり、冷気を吸ったりしても咳が出ず、肺活量や気道の狭さを調べる呼吸機能検査の結果が正常になると、徐々に薬の服用を中止していくことになります。
早期発見のポイント
以下のような方は、気管支喘息になる可能性があります。
・親がアレルギー疾患を持っている
・小さいときから風邪を引くとゼイゼイ、ヒューヒューと喘鳴することが多かった
・重症のアトピー性皮膚炎であった(である)
・ダニ、ハウスダスト、ネコ、イヌに対するIgE抗体が高値
他にも、長引く咳がある、走ったりすると咳が出て息が苦しい、冬に咳がひどい、朝方に咳で起きることが多いなどの症状があれば、医療機関で検査することをお勧めします。検査内容としては、アレルギー検査、呼吸機能検査、アレルギー炎症を測定する呼気NO検査などです。アレルギー検査は必要に応じて0歳から受けられますが、呼吸機能検査、呼気NO検査は正確な息の吸い方と吐き方を理解できる5〜6歳頃から検査可能です。
予防の基礎知識
喘息発作が落ち着いても気道のアレルギー炎症が残っていることがありますので、長期管理の治療が大切です。気道のアレルギー炎症が続いていると、リモデリングといって気道が狭い状態のままになってしまうことがあり、年齢ともに呼吸機能が低下していく要因になります。
年齢による呼吸機能の低下を少しでも減らすためには、喘息発作を起こさないこと、つまり気道の炎症を呼吸機能や呼気NO検査、気道過敏性の検査などで推定し、しっかりと長期管理の治療をしてこくことです。そして、喘息発作を早期に発見するには、ピークフローメーターを使用して、自分の呼吸機能を自宅で測定し、ぜんそく日記をつけておきましょう。ピークフローメーターとは、息を力いっぱい吐き出すときの速さ(ピークフロー値)を測定し、その値から気道の状態を客観的に把握できる家庭で使える小型の医療機器です。ピークフローメーターの値が下がっているときは喘息の悪化や喘息発作の兆候が起こっているかもしれません。重症な気管支喘息ほど、将来的な呼吸機能の低下が起こるとされていますので、早期にしっかりと治療しておきましょう。
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監修:清益 功浩
中津病院
小児科 免疫アレルギーセンター部長
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