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2019.06.05
陰茎など性器の周辺に小さな水ぶくれや赤いポツポツ、潰瘍などがみられるウイルス性の性感染症です。主に単純ヘルペスウイルス2型によって引き起こされます。単純ヘルペスウイルス1型もあって、主に口や唇の周りに水ぶくれを起こします。これらは口唇ヘルペスと呼ばれています。
水ぶくれの中にウイルスが存在し、感染者との性交の際に病変部と接触した皮膚や粘膜に感染します。一方で、水ぶくれなどの症状がなくてもウイルスを排出するケースもあるとされており、このような感染者との接触でも感染することがあるといわれています。ウイルスの潜伏期間は人によってさまざまですが、感染の機会があってから2~10日ぐらいといわれています。
初めての感染の際は、とにかく痛いのが特徴です。ウイルスに感染するとまず、外陰部の不快な感じやかゆみなどが現れます。その後、発熱や全身のけだるい感じ(倦怠感)、リンパ節の腫れなどとともに、外陰部に強い痛みを伴いながら小さな水ぶくれや赤いポツポツがたくさん出現します。この水ぶくれが破れると潰瘍となります。これらの病変は、男性では陰茎の亀頭、冠状溝、包皮などに、女性では外陰部や子宮頸部などに認められます。その痛みは激しく、特に女性の場合には排尿時痛による排尿困難や歩行障害などもみられ、時に入院治療が必要となることもあります。
また、完全に治すことは困難で、繰り返し再発するという大きな問題点があります。そのため、外陰部の症状のみならず、精神的な苦痛もとてもつらいということがいえます。 水ぶくれや潰瘍のところにウイルスそのものが認められるかどうか、またウイルスの存在を示すウイルス抗原というものが認められるかどうかなどをPCR検査という遺伝子検査等で調べます。このほか、血液検査で調べられることもあります。
抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)による薬物療法が中心です。症状が強い場合などには、通常の飲み薬ではなく注射剤が選択されることもあります。
注意したいのは、ウイルスは一度感染すると神経節というところに潜み、抗ウイルス薬を使用しても体内から消え去るわけではないという点です。心身の疲労があったり、他の性感染症にかかったり、アルコールを多飲したりすることで免疫が低下したときなどに再発するケースがみられます。ただし、再発時の症状は、一般的には最初に感染したときよりも軽いことが多く、治療には軟膏なども使用されます。
ウイルスの感染が否定できない相手との性交後に初期の症状である外陰部のかゆみや違和感(ムズムズ、ヒリヒリ、灼熱感など)があれば、自分も感染している可能性があるため注意が必要です。その後、外陰部に水ぶくれや赤いボツボツなどが出てきたら、泌尿器科や婦人科、皮膚科など専門科を受診しましょう
なお、外陰部に性器ヘルペス感染症による潰瘍などの病変がある場合には、エイズの原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染しやすくなるといわれています。そのため、症状が現れたら放置せず専門科で診療を受ける必要があります。
先述の通り、性器ヘルペス感染症は再発しやすいことのほかに、感染していても水ぶくれなどの症状が出ていないにもかかわらず、ウイルスを排出している例が少なからずあることが特徴です。そのため、性器ヘルペス感染症の予防は困難と言わざるを得ません。コンドームの使用は感染の確率を下げますが、例えば相手の病変が広範囲に及ぶような場合には、完全に防ぎきれるものではありませんので、注意が必要です。
解説:堀田 浩貴
小樽病院
副院長
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