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2020.03.25
長径10~25μm(0.01~0.025mm)程度の大きさのトリコモナス原虫という寄生虫による感染症です。
主な感染部位は、男性では尿道や前立腺です。女性では腟・子宮頸管・下部尿路です。
この中でも、腟に感染することにより腟炎を引き起こす腟トリコモナス症には特に注意が必要です。
多くは性行為によって感染しますが、性行為が未経験の女性や幼児でも感染者がみられます。身につけている下着やタオル、検診台、便座や浴槽が感染経路となることもあります。
ほかの性行為感染症と異なり感染者の年齢層が幅広く、中高年者でもしばしばみられるのが特徴です。これはパートナーが無症状のため気付かず感染することが多いのが原因としてあげられます。
腟炎が改善しても、隣接臓器に感染して尿道炎を起こすなどの可能性があるので注意が必要です。
男性では、主に尿道炎の症状を起こします。排尿時に痛みを感じたり、尿道口から膿が出たりしますが、無症状の場合も多いです。前立腺炎を起こし、排尿困難(おしっこが出しにくい)や頻尿などの症状が生じる場合もあります。
女性では、多彩な症状を起こしますが、20~50%は無症候性感染者(症状がないが感染している者)と考えられています。腟トリコモナス症の場合は、悪臭の強い泡状の帯下(おりもの)の増加や、外陰部・腟の刺激感、強いかゆみ、性交時痛などがみられます。下部尿路に感染している場合は排尿障害や頻尿などを引き起こします。
尿や腟分泌物、前立腺炎であれば前立腺分泌物を採取し、検体をそのままの状態でスライドグラスに乗せ顕微鏡で観察します。洋梨型のトリコモナス原虫が鞭毛(べんもう)を使ってくるくると回転するように活発に動いている姿を確認できれば診断できます。原虫が少数のため、見落としなどで確認できない場合は、培地を用いた培養検査を行ない診断します。
ただし腟トリコモナス症は、組織侵入性がない(感染が粘膜で留まる)ため血液検査による診断はできません。
男女ともにメトロニダゾール(抗原虫薬)による内服治療を10日間行ないます。治りにくい、再発するなどの場合は腟剤を使用することもあります。ただし妊娠中は、胎盤を通過し薬剤が胎児へ移行するので、内服薬の投与は原則として行ないません。
性的パートナー間のピンポン感染(互いに治っては感染するのを繰り返すこと)予防のためには、両者で同時期、同期間の治療を行なうことが重要です。また、内服治療中は飲酒を避ける必要があります。
自他覚症状がなくなり顕微鏡でトリコモナス原虫が見つからなければ、治癒したと判断します。ただし女性の場合は、月経時にトリコモナス原虫が増えることがあるため、月経後の確認が必要です。
性産業従事者や複数の性的パートナーを持つ人は、その他の性行為感染症と同様に感染のリスクが高くなります。リスクがあり、トリコモナス症特有の症状が出た場合は、産婦人科や泌尿器科を受診するようにしましょう。
有効な予防方法や予防薬はありません。無症状の感染者も多く、便座や浴槽からの感染を防ぐ術は現状ではありません。一方、再感染を防ぐためのパートナーとの同時治療は必要不可欠です。治りにくくなったり、再発したりするのを防ぐことにつながります。
解説:河野 通晴
済生会長崎病院
産婦人科部長
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