済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2020.04.08
酵母様真菌(カビの一種)であるカンジダ属による性器の感染症です。女性では主に外陰部と腟に感染し症状を引き起こします。同時に感染していることが多いため外陰部腟カンジダ症ともいいます。
カンジダは口腔、消化管、腟、皮膚の常在菌(常にその部位に存在している菌)であり、その存在を確認しただけではカンジダ症とはいえません。健康な女性の30〜50%の腟内に常在しているともいわれています。
発症を引き起こす原因は多く、性行為、免疫能の低下(糖尿病、妊娠中、抗がん剤治療中、免疫抑制剤の使用中など)、局所の不潔環境、ステロイド外用薬の誤用などがあります。特に風邪などで抗生物質を内服した後に発症することが多いのが特徴です。
性行為によって女性からパートナーの男性に感染し、まれにカンジダ性亀頭・包皮炎を引き起こす可能性があります。
また、非常にまれですが、性行為による男性から女性への感染もあります。妊娠中では、産道感染によって分娩時に新生児に感染することがあるため、特に早産児などでは注意が必要です。
主な自覚症状として、外陰部・腟の強いかゆみと灼熱感(焼けるように熱い感じ)があります。また、粥状・酒粕状・ヨーグルト状の白い帯下(おりもの)が増えるのが特徴です。外陰部痛や排尿障害が起こることもあります。見て分かる症状としては、外陰部の発赤(ほっせき=皮膚が赤くなること)や浮腫(むくみ)、かゆみによるひっかき傷などがあります。抗生物質の内服後にこのような症状が出た場合は、感染の可能性が高いです。
外陰部のかゆみや帯下の増加といった症状に加えて、顕微鏡でカンジダの菌糸や胞子を確認できれば診断できます。ただし、カンジダは腟内に常在しているため、菌糸が確認できても、症状がなければカンジダ症とはいえません。また、細菌による腟炎の合併などもあるため、顕微鏡で見るだけでなく、培地を用いたカンジダ培養検査を行なうのが簡便であり見落としが少なくなります。
治療に先立って、局所の清潔と安静を保つことが重要です。また、通気性の良い下着を着用して乾燥を促し、密着状態を避けることが大切になります。石鹸などでのむやみな自己洗浄は症状を悪化させることがあります。ぬるま湯で簡単に流す程度で問題ありません。また、自己判断でステロイド外用薬を使用している場合は、中止しましょう。
腟カンジダ症には腟錠、外陰部カンジダ症には外用薬を治療に用います。腟錠は連日投与と週1回投与の2通りがあり、簡便さから後者が選択されることが多いです。
通常は90%は治癒しますが、再発率は10%と高くなっています。特に妊娠中や糖尿病などの場合は再発する可能性が高く、できる限り発症要因を取り除くことが大切です。再発の場合は、初回治療のときとは違う薬剤を使用する必要があります。
外陰部のかゆみや帯下などの自覚症状が改善すれば、治癒したと判断します。
抗生物質の内服後に、外陰部・腟に強いかゆみを感じたり、粥状・酒粕状・ヨーグルト状の特徴的な白い帯下が増えたりといった症状が出た場合は、外陰部腟カンジダ症の可能性があります。
再発の場合も同様の症状が出ますが、細菌性腟炎の場合もあるため安易に自己判断しないよう注意しましょう。感染リスクが高い人はなるべく発症の原因となることを避け、日常生活でのセルフケアを行なうことが大切です。
症状があるときは我慢せず受診することをお勧めします。
健康な女性であれば、日頃より外陰部の局所を清潔に保ち、体調管理をして抗生物質の内服を減らすことが予防につながります。感染のきっかけを取り除くことが重要です。
糖尿病の人では、適切に血糖コントロールを行なうことが予防になると考えられます。また妊娠中では、分娩前に母体を治療しておくことが産道感染による新生児感染の予防になります。
性行為感染症の点では、ピンポン感染(互いに治っては感染するのを繰り返すこと)を予防するために、パートナーも同時に治療することが重要です。
解説:河野 通晴
済生会長崎病院
産婦人科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。