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2013.10.28
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は膝(ひざ)に痛みを生じる代表的な病気です。まず、膝関節の中には2種類の軟骨があります。骨の表面にあるもの(硝子軟骨/しょうしなんこつ、または、がらすなんこつ)と、骨の間にあってクッションの役割を果たす半月と呼ばれるもの(線維軟骨/せんいなんこつ)です。変形性膝関節症とは、硝子軟骨が傷んですりへってしまう病気です。これには“加齢”のように、病気やケガといった明確な原因が特定できない「一次性」と呼ばれるものと、膝の骨折、じん帯や半月の損傷、膝関節のねんざや慢性関節リウマチなど原因がはっきりと分かる「二次性」と呼ばれるものがあります。
日本国内では、長期間の膝への負担で少しずつすり減り変形していく、一次性の変形性膝関節症の発生頻度が圧倒的に多いとされています。また、すり減った軟骨は自然に元に戻ることが難しく、特に硝子軟骨の場合は元に戻ることがありません。
変形性膝関節症になると関節のかみ合わせが悪くなり、さまざまな症状が現れます。最も多いのが膝の痛みで、最初は動かしたり歩いたりしたときに痛みが生じますが、しばらく安静にしていれば軽減します。しかし、これがひどくなってくると、じっとしていても痛みがとれなくなります。
また、関節内に水がたまり、膝が腫れて重だるくなることもあります。そして、病状が進んでくると、次第に膝関節が変形していきます。日本人は内側型変形が多いため、O脚になることが多いですが、外側型ではX脚になってきます。これらの病状の進行にともなって、膝関節の動きが悪くなり、だんだんと正座をすることさえ困難になってきます。また、徐々に歩くことが困難になり、杖やシルバーカーなどの歩行補助具が必要になってきます。軟骨がすり減ることで関節が緩くなり、それに加えて筋力が弱くなることで膝関節がぐらつき不安定な状態になって、歩行などの日常生活に大きな支障をきたすようになります。
レントゲン写真では、関節の隙間は狭くなり、本来はない場所に骨ができてくる骨棘(こつきょく)と呼ばれる像が見られるようになり、進行すると関節の変形が起きます。
変形性膝関節症は女性に多く、年齢が高くなるほど多くなる傾向があります。症状の進行に影響を与える要因として、肥満や骨粗しょう症などが挙げられます。
変形性膝関節症の治療は、まず保存的な方法が行なわれます。その内容は生活指導、痛み止めの薬や湿布などの外用剤、温熱療法や電気療法などの物理療法、筋力訓練を中心としたリハビリテーション、足底板やサポーターによる装具療法、ヒアルロン酸を中心とした関節内注射などです。これらの保存的治療を行っても症状がよくならない場合には、手術が考慮されます。手術には関節鏡視下手術、骨切り術、人工関節置換術などが病気の程度や患者さんの生活様式などに応じて選択されます。専門の医師によく相談することが必要です。
変形性膝関節症は実際の病状と症状が必ずしも一致しません。例えばO脚が強く、レントゲン写真で病気が進行していても痛みはない、もしくはあっても軽く、歩行や日常生活に支障のない方がいます。一方、病気の程度は軽くても痛みが強く、生活や仕事に支障をきたしている方もいます。
初期段階では無症状の方が多数を占め、病気の早期発見は容易ではありません。それでも膝関節に違和感や重たい感じがあれば要注意です。朝起きたときや歩き始めに症状が出やすいのが特徴で、長い間座っていた直後の歩き始めは調子が悪く、歩いているとだんだん症状が軽くなってくる、といったときはこの病気を疑う必要があります。
また、膝がもう片方の脚と比較して大きい、腫れているといった場合は関節に水がたまっていることがありますので、そうした場合も変形性膝関節症ではないか、と考えてください。60歳を超えて膝関節痛があれば、まずこの病気を念頭に置くべきでしょう。
加えて、変形性膝関節症の治療中や、経過観察中に突然痛みが強くなったり、膝関節が動かしにくいといった場合は半月の障害を合併している可能性があります。そのような場合は整形外科の医師に相談して調べてもらいましょう。
膝の痛みのほか膝関節に違和感や重たい感じがあれば、変形性膝関節症を疑いましょう
変形性膝関節症を予防するには、まずは膝関節への過大な負担を避けることが必要です。肥満はもちろんですが、急激な体重増加にも注意が必要となります。その場合はダイエットをして、膝関節への負担を減らしましょう。
そのほか、重量物を持って歩き回ったり、中腰の姿勢で作業をしたりすると、変形性膝関節症にかかりやすくなります。普段あまり運動していないにもかかわらず、急に激しいスポーツをすると、膝関節に大きな負担がかかります。無理のない運動を心がけ、軽いものから始め、徐々に運動量を上げていきましょう。その際も十分に準備体操やストレッチングを忘れないようにしてください。できれば水中運動が膝関節に負担をかけずに効果的な運動ができるのでお勧めです。要するに、膝関節の負担を最小限にとどめ、適度な運動を行なうことが大切です。
膝関節周辺の筋力を強化することも予防には効果的です。治療と同時に、予防を目的とした膝体操もありますので、機会があれば一度整形外科の医師に相談したり、やり方のレクチャーを受けたりしてもよいでしょう。
また、骨粗しょう症によって変形性膝関節症が進行しやすいことが分かっています。前述したように適度な運動に加え、適度に日光に当たり、偏食をしないようにバランスのよい食生活を心がけ、健康を保つことこそが予防に欠かせない要素です。
解説:白形 陽生
済生会西条病院
副院長
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