社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい) SDGS rd05
SDGS rd05

2021.12.01

ロコモティブシンドローム

locomotive syndrome

解説:田窪 健二 (松山病院 副院長)

ロコモティブシンドロームはこんな状態

ロコモティブシンドローム(略してロコモ)とは2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、「運動器の障害によって移動機能が低下した状態」をいいます。「立つ」「歩く」機能が低下し、介護が必要となるリスクが高まった状態ともいえます。
運動器には、①身体を支える骨、②衝撃を吸収する関節や脊柱の椎間板、③身体を動かす筋肉や神経が含まれます。それぞれに起こりやすい代表的な病気として、次のようなものが挙げられます。

骨粗鬆症、骨粗鬆症性骨折
②変形性関節症、変形性脊椎症
③脊柱管狭窄症、サルコペニア(筋肉減少症)

ロコモは運動器の病気が発症していない、いわゆる未病の状態から医学的な治療が必要な状態までを指します。

ロコモティブシンドロームの症状

特に高齢者は運動器の病気にかかりやすく、下肢の痛みやしびれ、関節可動域の低下、筋力低下、バランス低下が単独あるいは複合して起こります。

ロコモティブシンドロームの診断

日本整形外科学会では、身体的機能を評価する「立ち上がりテスト」と「2ステップテスト」、身体の状態や生活状況を主観的に評価する「ロコモ25」の三つのテストをロコモ度テストとして勧めています。ここでは、自宅で簡単に評価できる「立ち上がりテスト」と「2ステップテスト」を紹介します。

●立ち上がりテスト
40cm、30cm、20cm、10cmの高さの台に座った状態から両脚または片脚で反動をつけずに立ち上がり、3秒間姿勢を保持できた一番低い台の高さを測定結果とします。このとき、両脚を肩幅くらいに広げ、両腕は組んで肘を上げます。

●2ステップテスト
下肢の筋力やバランス能力、柔軟性などの観点から歩行能力を評価するテストで、2歩分の最大歩幅(cm)を測定し、身長(cm)で割った値を2ステップ値とします。

 

2ステップ値=2歩幅(cm)÷身長(cm)

二つのテストの結果、対策が必要となる基準は以下のとおりです。

【ロコモ度1】
下記の一つでも該当。移動機能の低下が始まっている状態です。
・立ち上がりテスト:左右どちらか一方でも片脚で40cmの高さの台から立ち上がれない
・2ステップ値   :1.3未満

【ロコモ度2】
下記の一つでも該当。移動機能の低下が進行している状態です。
・立ち上がりテスト:両脚で20cmの高さの台から立ち上がれない
・2ステップ値   :1.1未満

【ロコモ度3】
下記の一つでも該当。移動機能の低下が進行し社会参加に支障をきたしている状態です。
・立ち上がりテスト:両脚で30cmの高さの台から立ち上がれない
・2ステップ値   :0.9未満

ロコモティブシンドロームの治療法

ロコモと判定されれば、筋力やバランス力を改善する運動療法が必要となります。
「ロコモ度1」ではロコモーショントレーニング(ロコトレ)をはじめとする運動習慣を身につけましょう。「予防の基礎知識」で紹介しています。
「ロコモ度2」では現在は生活に支障を感じていなくても、近い将来支障が出てくる可能性が高くなっています。特に、背骨や四肢の痛み、しびれなどの症状がある場合は運動器の病気を起こしている可能性がありますので、医療機関の受診をお勧めします。
「ロコモ度3」では自立した生活ができなくなるリスクが非常に高くなっています。運動器の病気の治療が必要となっている可能性が高いため、医療機関の受診が必要です。
また、ロコモでは肥満などのメタボリックシンドローム(メタボ)を併発しやすくなります。ロコモとメタボは相互に悪影響を及ぼすため、運動だけではなく栄養管理などを含めた生活習慣病の予防・治療も行なうことが重要です。

一般の人がロコモに気づくための質問票が「ロコモーションチェック(ロコチェック)」です。以下の七つの項目のうち一つでも当てはまればロコモの可能性があります。

 □片脚立ちで靴下がはけない
 □家の中でつまずいたりすべったりする
 □階段を上がるのに手すりが必要である
 □横断歩道を青信号で渡りきれない
 □15分くらい続けて歩けない
 □2kg程度(1リットルの牛乳パック2本程度)の買い物をして持ち帰るのが困難である
 □家のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難である

ロコモの予防や改善のためには習慣的な運動、活動的な生活、適切な栄養摂取、運動器の病気の管理が必要です。そのうち、特に筋力とバランス能力を高めるための運動として「スクワット」と「開眼片脚立ち」がロコモーショントレーニング(ロコトレ)として推奨されています。

●スクワット
立った姿勢から腰を引きながら膝を曲げていき、膝が90度曲がったところで再びゆっくり立ち上がる動作です。1回の動作に10秒程度かけ、5~15回を1セットとし、1日2~3セット行ないます。膝がつま先より前に出ないことが重要です。前傾姿勢でよく、両手は下げても前に出してもかまいません。

●開眼片脚立ち
バランス能力を高める運動で、目を開けたまま床につかない程度に片脚を上げます。左右1分間ずつ、1日2~3回行ないます。転倒しないように、机や壁などつかまるものがある場所で行ないましょう。

また、ロコトレにプラスして行なうとよい運動(ロコトレプラス)として、「カーフレイズ」と「フロントランジ」があります。

●カーフレイズ
スクワットのふくらはぎへの刺激が少ないという点を補う効果があります。立った状態でかかとをゆっくり上げ下げする運動です。10~20回を1セットとし、1日1~3セット行ないます。不安定な場合は机や壁に手をついて行ないましょう。

●フロントランジ
少し負荷の大きい運動で、壮年期(25~44歳の活動的な時期)や比較的運動機能の保たれている高齢者に適しています。立った状態から片脚を大きく前に踏み出します。その後、膝を曲げながら腰を下げ、また元の姿勢に戻ることを繰り返します。両脚を左右にやや開いた位置で行なうと転倒の危険が少ないです。5~10回を1セットとし、1日1~3セット行ないます。

解説:田窪 健二

解説:田窪 健二
松山病院
副院長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

関連記事

  1. 「座りすぎ」にご⽤⼼! ちょっとした⼯夫で健康な⾝体を(病気解説特集 | 2022.4.26)
  2. 変形性足関節症(病名から探す | 2021.3.3)
  3. しびれ(症状から探す | 2020.7.30)
  4. 「フレイル」は介護予防のキーワード 普段の食事と運動が大事(病気解説特集 | 2019.9.30)
  5. 頸部脊柱管狭窄症(病名から探す | 2017.2.23)
  6. 変形性股関節症(病名から探す | 2015.4.28)
  7. 骨粗鬆症(病名から探す | 2014.7.30)
  8. 腰部脊柱管狭窄症(病名から探す | 2014.1.7)
  9. 変形性膝関節症(病名から探す | 2013.10.28)