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2017.04.14
心臓の右心室から肺に血液を送る血管を肺動脈といいます。肺動脈を通過し、肺に到達した血液はガス交換を行ない、酸素を取り入れた血液は再び心臓の左心房という部屋に戻った後、左心室から大動脈を通過し全身に送られます。
肺高血圧症とは、肺動脈の血管内腔が何らかの原因で狭くなることにより、血液が通りにくくなって肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる病気です。
具体的には、右心カテーテルという検査で測定した安静時の平均肺動脈圧が25mmHg以上であること、左心系異常は認めないことが必須の条件となります。
肺動脈の血管内腔が狭くなると、肺を通過する血液の循環が悪くなります。また肺動脈圧が上昇すると、右心室に高い圧力がかかることにより心臓に負担が生じて、右心室の機能低下(右心不全)を引き起こします。
肺高血圧症の仕組み
肺高血圧症はさまざまな原因により起こりますが、現在は原因ごとに第1群から第5群に分類されています。
肺高血圧症の分類
第1群:肺動脈性肺高血圧症
第2群:左心疾患による肺高血圧症
第3群:肺疾患および/または低酸素血症による肺高血圧症
第4群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症
第5群:原因不明あるいは複合的な要因による肺高血圧症
以前は有効な治療法がなく、長期間治療を受けていてもあまり大きな効果は得られませんでした。ところが最近では新しい薬が開発され、これまでより高い治療効果が得られるようになってきました。一般的には抗凝固薬や利尿薬、強心薬といった薬剤が用いられますが、肺動脈性肺高血圧症では血管拡張薬が治療の中心となっています。
薬物治療以外には、軽い運動の推奨や病気に伴う不安に対する精神的ケア、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチン接種を含めた日常感染予防の実施、右心不全をきたしている場合には減塩食とともに水分制限を行なうなどの生活指導が行なわれます。また、肺高血圧症では全身へ酸素を運ぶ機能が低下していることから、酸素吸入療法を行なうことにより心臓の負担を軽減させることができます。薬物治療を含めた内科的治療でも効果が得られない場合は、原因に応じてカテーテルを用いた経皮的肺動脈形成術や心房中隔裂開術、肺移植といった手術療法を行なうこともあります。
特徴的な症状はありませんが、初期症状として軽い労作時(階段を上る、坂道を歩くなど)の息切れや疲労感があります。病状が進行し、右心不全を引き起こすと呼吸困難や立ちくらみ、顔や足にむくみが出現したり、失神を起こすこともあります。心電図や胸部単純X線、CT、MRI検査、心臓超音波検査といった非侵襲的(生体を傷つけない)な検査で病気であるかどうかを知ることが可能です。
病態の主体は肺動脈内腔の狭窄ですが、正確な仕組みはいまだに解明されていません。したがって、予防する方法は現在のところありません。
軽い労作で息が切れる、疲れやすいなどの症状が続く場合は内科や循環器科、呼吸器科の先生に一度相談をしてみてください。
解説:永井 智仁
埼玉県済生会栗橋病院
呼吸器内科科長
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