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2019.05.23
心因性嘔吐は、原因となる疾患がなく、心理的なストレスが原因で慢性的に何度も嘔吐することをいいます。本人が心理的ストレスを認識していないこともあります。特に、子どもは精神が未成熟なので、ストレスをうまく処理できず身体症状を起こしやすいです。精神発達に問題があると、さらに可能性は高くなるでしょう。重度の精神発達遅滞の患者さんとなると、ときには成人になっても同様の症状が継続する人もいます。
ストレスを伴う場面から離れると改善します。したがって、学校や塾にストレスがある場合は、そこに行く前に嘔吐してしまいますが、行かない日は元気に過ごせることがあります。
強い腹痛や便通異常、体重減少などほかの症状を伴うことは少ないので、もしこれらの症状も合併している場合は、ストレス以外に病因があると考える必要があります。
「嘔吐の原因となるほかの病気がない」と診断され、「症状の発現に心理的なストレスが関連している」という状況が確認された場合にのみ診断されます。慢性的な嘔吐の原因となる病気は多くあります。そのため、心理的なストレスがあるからといって心因性嘔吐と診断すると、ほかの病気を見逃してしまうことがあるので、詳しい問診や検査が必要です。また長期間の経過をみて判断する必要があるので、心因性嘔吐の可能性が高くても、ある程度時間をかけて診断する場合が多いです。
ほかの身体症状が伴う場合や検査の異常で診断しやすい病気の場合は比較的容易に鑑別できますが、嘔吐のみの場合や検査で異常が見つかりにくい病気の場合は難しいことがあります。例えば、小児期の場合は、周期性嘔吐症候群(何度も嘔吐を繰り返す病気)であったり、側頭葉てんかん(上腹部の不快感や頭痛、動悸などの前兆が多くみられ、その後、意識を失う病気)で嘔吐の症状のみ現れたりするときがあります。これらの病気は、発作的でかつ慢性的であり、精神的ストレスや疲労などが症状発症の引き金になることも多いので、心因性嘔吐と区別が難しい場合もあります。
小児期の場合、一般的には精神発達に伴い、心理的ストレスをうまく処理できるようになって改善することが多いです。いじめなどの外部環境の問題が背景にあるときは、それに対する介入が必要です。精神疾患や発達障害が背景にある場合は専門医の受診が必要となります。症状が強い、もしくはあまりにも多い場合は、嘔吐への恐れから摂食障害を引き起こしたり人前で吐くことを恐れて引きこもりになったりすることもあるので、何らかの治療が必要です。カウンセリングといった心理療法や行動療法(恐怖症などの行動上の問題に焦点を当て、不適切な反応を改善させる療法)も有効ですし、薬物療法(鎮吐剤、抗不安薬など)を併用することもあります。
解説:村上 善勇
加須病院
神経内科副担当部長
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