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2021.08.04
ヒトメタニューモウイルス感染症は呼吸器に炎症を引き起こす病気です。
ヒトメタニューモウイルスは一般にあまり聞き慣れないウイルス名だと思いますが、2001年にオランダの研究グループが発見して報告した比較的歴史の浅いウイルスです。
ヒトメタニューモウイルスは感染力が非常に強く、くしゃみや咳による飛沫感染や、ウイルスが付いた手や鼻水を拭いたタオルなどによる接触感染で広がります。保育園や幼稚園、小学校、家族内で集団感染を起こしやすいです。
一年中感染する可能性はありますが、中でも3~6月が多く、ほぼ毎年流行がみられます。2歳までに50%くらいの子どもが、10歳までにほぼすべての子どもが一度は感染するといわれています。その後も繰り返し感染することが知られています。
潜伏期間(ウイルスに感染してから症状が現れるまでの期間)は4~6日です。ウイルスの排出は症状が出てから1~2週間持続するため、この期間は他人に感染させる可能性があります。
咳、鼻水、発熱などの症状が主にみられます。症状はRSウイルス感染症と似ています。
成人も含めて多くの場合は上気道炎(喉や鼻の風邪)症状のみですが、0~5歳の乳幼児や高齢者に感染すると気管支炎や肺炎を起こしやすいです。
重症化すると呼吸困難に陥ることがありますが、命に関わることは極めてまれです。
重症化するリスクの高い乳幼児に対しては、インフルエンザのように専用の綿棒で鼻の奥から鼻水を採取する迅速検査が保険診療で認められており(6歳未満の患者さんが対象)、15分程度で迅速に診断が可能です。
ウイルスを直接攻撃する特効薬はなく、自然に治るまでは症状を緩和する去痰薬(きょたんやく=痰の吐き出しやすくする薬)などを使用することが多いです。
高熱が持続し、飲食が困難になった場合や、息苦しさ(呼吸困難)が強い場合は入院が必要となります。
ヒトメタニューモウイルス感染症を予防できるワクチンは現在のところありません。保育園や幼稚園、小学校、家族間での集団感染に注意が必要です。予防には手洗いやうがいを徹底しましょう。
解説:岩城 拓磨
香川県済生会病院
小児科部長
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