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2024.05.22
網膜静脈閉塞症は、網膜の血管が詰まることで血の巡りが悪くなり、網膜に出血が起こる病気です。
物を見るのに重要な「黄斑部(おうはんぶ)」という網膜の中心部に出血が起こると、視力低下・視野異常をきたします。また、血管が詰まることによって脆くなり、黄斑部にむくみ(黄斑浮腫)ができることもあります。
血の巡りが悪化すると、網膜や虹彩に新生血管という異常な血管が生じることがあります。これは、硝子体(しょうしたい)出血や血管新生緑内障という重度の視力障害や視野障害の原因となります。
小さな出血では自覚症状がない場合もありますが、多くは視力低下や視野異常(視界がぼやける、視界の範囲が狭まるなど)が起こります。黄斑浮腫が起こると、視界に歪みが出たり、左右で見えるものの大きさや色が違って見えたりします。
初めに、自覚症状や生活習慣病の病歴、喫煙歴の有無などを調べます。次に、視力検査で視力低下がないか、眼圧検査で眼圧上昇がないかを確認し、さらに目薬で瞳孔を大きく広げて目の奥や水晶体などを調べる散瞳検査で網膜の出血の範囲をみます。
これらの結果で網膜静脈閉塞症が疑われる場合は、近赤外光で網膜の断面像を観察する光干渉断層計(OCT)で、黄斑浮腫の程度をみる検査をします。そのほか、腕の血管に造影剤を注射して眼の奥の血管異常をみる蛍光眼底造影検査で、網膜の血の巡りや異常な新生血管などを確認するなど、より精密な検査を進めていきます。
また、最近では光干渉断層血管撮影(OCTA)で、造影剤を使用せずに網膜や黄斑部の血管や血流の状態を確認することもできるようになりました。
小さな出血のみであれば、経過観察で出血の吸収を待つため、高血圧などのもともとある内科疾患の治療を継続します。視力低下や黄斑浮腫がある場合は、眼の奥の硝子体という部分に直接薬剤を注射する抗VEGF硝子体注射を打ちます。血の巡りが悪い網膜がある場合には、硝子体出血や血管新生緑内障を予防するために、網膜光凝固術(もうまくひかりぎょうこじゅつ)というレーザー治療を行ないます。すでに硝子体出血がある場合には、硝子体手術で出血を取り除きます。
片眼が網膜静脈閉塞症になっても、両眼で見ていると気づかないことがあります。そのため、たまに片眼を隠して、視力低下や歪みなどがないか、カレンダーなどを見てチェックすることをお勧めします。もし見え方に異常があれば、早めに眼科を受診してください。
高血圧・脂質異常症・糖尿病があると網膜静脈閉塞症になるリスクが高くなります。これらの病気を指摘された場合は、内科での治療を継続することが大切です。さらに日常の食生活では塩分・脂っこい食事・糖分を摂り過ぎないようにして、適度な運動を心がけましょう。
解説:天野 紘子
川口総合病院
眼科 主任部長
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