社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2013.12.24 公開

慢性肝炎

chronic hepatitis

解説:菱木 智 (横浜市南部病院 消化器内科副部長・消化器診断センター長)

慢性肝炎はこんな病気

ウイルス肝炎は急性肝炎と慢性肝炎の2つに分けられます。ウイルスに感染している人の血液、あるいは血液成分が混入した体液や、浸出液(切り傷などを治すために傷口から出る分泌液)を介して感染し、その後ウイルスによって肝細胞が破壊され始めます。そのうち、肝機能異常が6カ月以上続く状態を慢性肝炎と呼び、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスが原因となります。慢性肝炎は自覚症状がほとんどない人が多いですが、肝機能異常が持続して、長い年月をかけて肝臓を傷めていくこともあるため、注意が必要です。実際、肝臓がんとなる原因の約9割を、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスが占めています。

B型肝炎とC型肝炎とは

予防対策が確立される前は、B型肝炎ウイルスに感染している母親から、出産時などに赤ちゃんへ感染することもありました。現在では、B型肝炎の感染経路として最も注意すべきなのは、B型肝炎ウイルスに感染している人との性交渉です。また、覚せい剤の注射針や入れ墨の針などから、B型肝炎ウイルスに感染する場合もあります。一部の劇症肝炎を除いて、急性肝炎発症後、ウイルスは自然に排除されて治癒します。しかし、成人後の感染でもまれに慢性化することがあります。B型慢性肝炎は、倦怠感などの症状を除けばほとんど自覚症状がありません。ただし、そのまま放置しておくと約10%は肝硬変や肝がんに移行する危険があるので、定期的に検査を受けて治療する必要があります。

C型肝炎ウイルスは、注射針の使いまわしや入れ墨により感染しますが、感染源がわからない症例もあります。感染すると約30%の人は一過性で治癒しますが、約70%の人は慢性的にウイルスに感染している、持続感染状態になります。C型慢性肝炎はほとんど自覚症状がなく、感染に気づかずに過ごしてしまう人もいます。しかし、約30%の人は20~40年後に肝硬変や肝臓がんを発病します。そのため、定期的に検査と治療を受ける必要があります。ウイルス性肝炎の治療には、インターフェロンという注射を中心として、抗ウイルス薬を併用することもあります。

菱木 智

解説:菱木 智
横浜市南部病院
消化器内科副部長・消化器診断センター長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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