済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約67,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、404施設・435事業を運営し、67,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
40都道府県で、病院や診療所などの医療機関をはじめ、高齢者や障害者の支援、更生保護などにかかわる福祉施設を開設・運営。さらに巡回診療船「済生丸」が瀬戸内海の57島の診療活動に携わっています。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
近年、地球温暖化などの影響により、夏の暑さはどんどん深刻になっています。2024年10月に消防庁が発表した報告によると、全国において熱中症による救急搬送人員は2021年以降増加し続けており、2024年の救急搬送人員は累計97,578人と、2008年以降最も多い記録となりました(参考:総務省消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」)。
熱中症による救急搬送増加の背景には、気候変動による気温の上昇だけでなく、高齢化社会の進行もその要因の一つとして挙げられます。高齢者は体温調節機能の低下や、持病がある場合も多いため、熱中症になるリスクが特に高いといわれています。
そもそも熱中症とは、高温多湿な環境下で体温の調節がうまくできなくなり、体内に熱がこもってしまうことで起こるさまざまな症状の総称を指します。
高温多湿の環境で運動や活動をすると、体温はどんどん上がります。本来、体温が上がると体は汗をかいたり血管を拡張したりして熱を外へ逃がしますが、気温や湿度が高すぎると放熱がうまくできなくなり、体内に熱がたまってオーバーヒートしたような状態になります。
また、汗をかくことで水分とともに体内の塩分(ナトリウムなど)が失われ、血液の濃度が高くなります。そうすると、脳や筋肉、内臓への血流が不足し、めまいや吐き気といったさまざまな不調が起こります。まれに意識障害や臓器障害などの深刻な症状に至ることもあります。
前述した高齢者のほかにも、体温調節機能が未発達な子どもや、筋肉量が少なく冷房による冷えなどから自律神経が乱れやすい女性(特にやせ型)も熱中症になりやすいため、特に注意が必要です。
熱中症対策のひとつとして近年注目されているのが、「暑熱順化(しょねつじゅんか)」です。暑熱順化とは、簡単にいうと「体を暑さに慣らすこと」。気温が高めの環境下で適度に汗をかくことで、体を暑さに慣らし、高温多湿な環境で活動を行なっても熱中症を起こしづらくなります。
暑熱順化できていない(体が暑さに慣れていない)場合、気温や湿度が高い環境下では発汗の調整が正常に行なわれず、汗をかきにくい、もしくは汗をかきすぎてしまう状態になることがあります。うまく発汗が行なわれないと体温は上昇し、さらに脱水状態に陥りやすくなるため、熱中症のリスクが高まってしまいます。
一方、暑熱順化できている(体が暑さに慣れている)場合、汗腺の働きがスムーズになっているため、多少気温や湿度が高い環境下にいても、汗が早く出るようになります。汗が早く出ることによって体温が安定しやすくなり、脱水状態に陥りにくく熱中症のリスクも低くなります。
暑熱順化するためには、適度に汗をかく運動を行なったり(詳しい運動方法は後述します)、シャワーだけでなく湯船にも浸かって汗をかいたりと、「体を暑さに慣らす」ような生活習慣を意識することが大切です。これらのトレーニングは5~10日間ほど継続して行なう必要があり、時期は気温が高くなり始める初夏~梅雨、具体的には6月から7月上旬頃が理想。この時期は急に気温が上がる日もあり、体が暑さに対応し始める準備段階にあたるからです。気温が徐々に上がってくる時期に体を暑さに慣らすことで、無理なく安全に暑熱順化が進みます。
トレーニングの開始時期が遅くなっても、暑熱順化の効果は得られます。しかし、真夏の場合は熱中症のリスクが高まるため、比較的気温が低い早朝や夕方に行なう、無理せず短時間から始めるなど、慎重にトレーニングを行なってください。
安全に、かつ効率的に汗をかくことができる、暑熱順化に効果的なエクササイズの例を、普段リハビリなどを行なっている理学療法士が紹介します。
まず、一般の人向けの基本的なエクササイズです。自宅にいる時や、通勤・通学時に少しずつ取り入れて、汗をかく習慣をつけてみましょう。
次に、激しい運動が難しい高齢者などにおすすめのエクササイズです。椅子に座ったままでも、「大腿四頭筋」という太もも前側の筋肉を意識しながら足を動かすと、筋肉に熱がたまって体温が上がり、効率的に汗をかくことができます。自身の健康状態に合わせて、「無理しすぎず、楽すぎない」程度に行なってください。
汗をかく機能が十分に発達していない子どもも、暑熱順化することで熱中症の予防につながります。柔軟体操やインターネット上で公開されている体操動画など、子どもが興味を持つ動きに親子で一緒にチャレンジしてみてください。子どもが遊びながら自然に汗をかくことができるよう、家族が気温や湿度などに配慮すると、より効果的です。
これらのエクササイズを行なう際、熱中症にならないよう水分や塩分を忘れずに補給してください。特に高齢者には、効率的に水分、塩分を補給できる経口補水液がおすすめです。そのほかにも帽子などで日よけ対策を十分に行なったり、通気性の良い服を選んだりするなど衣類を工夫することで、運動中の熱中症を予防できます。
「トレーニング=運動」と考えると、暑熱順化へのハードルが高く感じてしまうかもしれませんが、ぜひ自分の体調や生活リズムに合った汗のかき方を見つけて、気軽に取り入れてみてはいかがでしょうか。
熱中症は、命に関わる場合もある危険な病気です。子どもや高齢者は特に注意が必要なため、周囲の見守りや声がけも重要。元気で安全な夏を過ごすために、暑熱順化をはじめとする熱中症対策を、日頃から少しずつ意識してみてください。
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