2014.02.12 公開
2025.10.30 更新

インフルエンザ

Influenza

解説:安井 良則 (中津病院 院長補佐・感染管理室長)

インフルエンザはこんな病気

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって発症する感染症です。毎年、冬になると患者さんが多くなり、2020年に国内に新型コロナウイルス感染症が流行する以前は、1月の第4週・第5週ごろに流行のピークを迎えることが多かったのですが、2023年にインフルエンザの流行が復活した後では、流行のピークの時期は定まっていない印象です。

インフルエンザの主な感染経路は、感染者のくしゃみ・せき・会話等で口から発せられるインフルエンザウイルスを含んだしぶき(飛沫)を浴びて吸い込むことによって起こる飛沫感染です。また、一時的に空気感染の一種であるエアロゾル感染が感染経路を呈する場合があるとの報告があります。

インフルエンザウイルスに感染すると、感染後1~5日間の潜伏期間を経て、38℃以上の突然の発熱と、頭痛関節痛筋肉痛などの身体の痛みが起こり、さらに鼻水、せき、のどの痛みなどをきたす場合が多いです。
多くの症例では、発症してから1週間ほどで自然に治りますが、肺炎や脳症などの重い合併症を起こし、生命に関わる場合もあります。特に高齢者や重篤な合併症、基礎疾患がある方がインフルエンザに罹患した場合は注意が必要です。

インフルエンザは感染力が強く、流行期間中には学校や幼稚園、保育園のような乳幼児・小児の集団生活施設だけではなく、高齢者の入所施設等でも集団感染がみられています。感染を拡大させないためには、発病者を速やかに隔離する等の対策が必要となります。しかし、ウイルスに感染した人が全員発症するわけではなく、症状が出なかったり、ごく軽いままで終わる人もいるので、感染したことに気づかず、ウイルスを保有した人と同じ空間で過ごしてしまうことがあります。そのため、ウイルスを完全に予防することは難しいといえます

発症したらすぐに受診を

インフルエンザを発症したら、他の人にうつさないように保育園や学校、会社などは休みましょう。食事・就寝は家族とは別の部屋で行ない、安静に過ごします。タオルは共用せず、看病をする人はマスクをつけましょう。

抗インフルエンザウイルス薬は、発症後早いうちに服用することで、発熱等の症状のある期間を短縮させ、早く回復することが期待できます。インフルエンザの発症が疑われる場合はすぐに病院を受診してください。インフルエンザ発症の診断は、現在は鼻咽頭拭い液を採取して迅速抗原検査を行なうことが大半ですが、発症から短時間では偽陰性となることがあり、注意が必要です。

これまでの抗インフルエンザウイルス薬は、内服薬であるオセルタミビル(タミフル)、吸入薬であるザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、点滴投与薬であるペラミビル(ラピアクタ)で、これらはすべてノイラミニダーゼ阻害薬に分類され、耐性ウイルスが出現した場合はどれも効果が期待できない可能性がありました。またノイラミニダーゼ阻害薬はB型インフルエンザに対してはA型と比べて治療効果が低いともいわれていました。

一方、2018年に販売が開始された内服薬であるパロキサビル(ゾフルーザ)は、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬であるため、これまでのノイラミニダーゼ阻害薬に耐性を示すウイルスであっても効果がみられる可能性が高いです。また、B型インフルエンザに対しても効果的であるとの報告があります。しかし、パロキサビルの発売当初には、投与された患者さんからは同薬に耐性を示すウイルスが検出されるとの報告がありました。発売後7年以上が経過した2025年現在、耐性ウイルス増加の報告はみられていませんが、これからも慎重に評価していく必要があると思われます。

12月中旬までにワクチンを

インフルエンザワクチンを接種すると、インフルエンザの発症率・重症化率を下げることができます。
特に乳幼児や高齢者、他の慢性疾患のある人など、インフルエンザにかかると重症化する可能性が高い人は、流行シーズンの前に接種しておくべきです。ワクチンは、接種してから効果が出るまでに2週間ほどかかります。

新型コロナウイルス感染症の流行以降は流行のピークの時期はこれまでとは異なること多いですが、それでもインフルエンザは冬期を中心に流行する感染症であることに変わりはありません。従って、冬期の流行期に入る前、具体的には11月中には接種を終えておくことが望ましいと思われます。

マスクで口と鼻を覆って

インフルエンザの主な感染経路は飛沫感染ですから、感染者の口から発せられたウイルスを含んだ飛沫を吸い込まないようにするために、マスクの装着はある程度の効果が期待できます。一方、口から発せられたばかりの飛沫はある程度の大きさがあってマスクで効率よくトラップできるため、感染者がマスクを装着する方が、感染対策としては効果的であると言われています。人に向かって咳やくしゃみをするべきではないことは言うまでもありませんが、インフルエンザの感染対策としては、咳エチケット(人に向かって咳やくしゃみをしない、咳やくしゃみが出る場合はマスクを装着する等)が重要であることはご理解ください。

手洗いを心がける

ノロウイルスやアデノウイルスと違って、インフルエンザウイルスは、患者さんの身体の外に出ると数時間で死活します。そのため、患者さんの触った場所などから感染することはあまり多くありません。
しかし、念のため患者さんの唾液などが付いた場所は、アルコールなどで消毒するとよいでしょう。また、手洗い(手指衛生)は、他の感染症の対策も合わせて心がけましょう。

安井 良則

解説:安井 良則
中津病院
院長補佐・感染管理室長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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