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2025.04.09

口唇ヘルペス

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解説:堀田恵理 (京都済生会病院 皮膚科 副部長)

口唇ヘルペスはこんな病気

口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスによる感染症です。皮膚や粘膜に触れることで、人から人に感染します(接触感染)。発熱の後に症状が出ることが多いことから「熱の華」 とも呼ばれており、一般的にも聞き覚えのある方が多い病気かもしれません。
口唇ヘルペスは、実は大部分の方が乳幼児期や小児期に初感染を経験しています。その際、約90%の方には特に症状が出ず、残りの約10%の人は発熱・全身倦怠感・リンパ節の腫れなどが生じます。初感染時の潜伏期間(感染から発症までの期間)は約2~10日ですが、初感染後もウイルスが神経の一部(神経節)に潜んでおり(潜伏感染)、疲れやストレス、睡眠不足、長時間紫外線を浴びるなどの外部の刺激や免疫力の低下によって、繰り返し症状が出ることがあります。

口唇ヘルペスの症状

口唇ヘルペスを発症すると、唇や周囲にピリピリした痛みや違和感・痛みや痒さが出現し、その後、皮膚表面に赤み(紅斑)と水疱(水ぶくれ)が集まったような皮疹(ひしん)が出現します。水疱は中央が凹んでいるのが特徴的で、「中心臍窩(ちゅうしんさいか=中央の凹み)を伴う水疱」とも表現されます。

前述したように、多くの人は乳幼児期や小児期に単純ヘルペスウイルスの初感染を経験していますが、大人になってから初めて感染した場合は、高熱が出たり、口の中や舌、唇に小水疱やびらん(表皮が欠損した状態)が多発するなどの強い症状が現れることがあります。また、アトピー性皮膚炎の人が初めて感染した場合も、高熱や全身の倦怠感、身体中に複数の皮疹(カポジ水痘様発疹症)が出現するなどの重い症状が出る場合があります。

口唇ヘルペスの検査・診断

患部の見た目(臨床症状)で判断することが多いです。検査としては、ウイルスに感染した細胞の有無を判定する「Tzanck法(ツァンク法)」、ウイルス特異的免疫グロブリンの値の変化を「感染初期」と「回復期」で見比べて約1カ月の経過を観察する血液検査(ペア血清)、単純ヘルペスウイルスの抗原を検出できる「デルマクイック(R)HSV」という迅速検査キットなどがあります。帯状疱疹伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)など、他の病気と区別がつきにくい場合は、これらの検査を総合的に行なって判断します。

口唇ヘルペスの治療法

症状が非常に軽い場合は、無治療で経過観察となったり、医療機関を受診するまでに既に治っているということもあります。軽症の場合は、抗ウイルス薬の外用薬を使用します。痛みが強い場合や早く治したい場合は、抗ウイルス薬の内服を5日間行ないます。再発しやすい場合は、発症予防として抗ウイルス薬を内服する治療法や、発症の初期段階であらかじめ抗ウイルス薬を内服する治療法もあります。抗ウイルス薬の内服時は、水分をいつもより多めに摂取する必要性があります。また、腎臓の機能によって内服量の調節が必要なことがあるので、医師の指示に従ってください。症状が重い場合は髄膜炎や神経麻痺が起こることもあるので、速やかに医療機関を受診して下さい。

 

疲労が溜まっている時や、睡眠不足の際に症状が出やすいです。皮膚にピリピリした違和感や痛みを感じたら、初期症状が現れている可能性があります。

口唇ヘルペスは、親子や夫婦など家族間での感染が多いです。発症している人の患部に触れたり、タオルや食器などを共有したりすることは避けてください。また、強い紫外線に長時間あたることは避ける、疲労が溜まった時はしっかり睡眠や栄養を取るなど、基本的な生活習慣が口唇ヘルペス発症の予防につながります。また、口唇ヘルペスの症状の予兆がある際に、患者さんの判断で内服可能な治療法が保険適用となっているので、早めの受診を心がけましょう。

解説:堀田恵理

解説:堀田恵理
京都済生会病院
皮膚科 副部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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