2013.09.09 公開
2025.11.27 更新

MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)

Metabolic dysfunction Associated Steato Hepatitis

解説:岡上 武 (大阪府済生会吹田病院 名誉院長)

MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)はこんな病気

従来、肝細胞の3分の1以上に脂肪がたまっている状態を脂肪肝と呼んでいましたが、最近は5%以上の肝細胞に脂肪がたまっていれば脂肪肝と診断しています。
脂肪肝というと「お酒の飲み過ぎが原因では?」と思う人も多いのではないでしょうか。
しかし実は、飲酒量の多くない人(日本酒換算で1合/1日以下)、あるいは全く飲まない人でも、脂肪肝になる人がたくさんいます。国内では、お酒をあまり飲まないのに脂肪肝になる患者さんは2000万人以上にものぼると推定されています。

こうした患者さんのうち約20%の人は、脂肪肝と同時に肝組織に炎症、線維化を起こし、MASH(マッシュ/代謝機能障害関連脂肪肝炎:Metabolic dysfunction Associated Steatohepatitis)と呼ばれる状態になっています。また、MASHはもともとNASH(ナッシュ/非アルコール性脂肪肝:Non-alcoholic Steatohepatitis)という名称でしたが、実際はアルコール性の有無だけでなく、糖尿病や肥満、脂質異常症などの代謝異常も深く関連しているため、2023年よりMASHに名称が変更されています。

お酒を飲まない人の脂肪肝は、単に脂肪がたまっているだけなら大きな問題は生じないことも多いといわれています。しかし、炎症、線維化を伴うMASHに進行すると、肝硬変に進行してしまう可能性が出てきます。肝硬変になると、肝不全肝がんで亡くなる可能性がとても高くなります。
そのため、食事療法や運動療法、薬の投与を行ない、MASHの進行を防止することがとても重要となります。

MASHは生活習慣病の一種

MASHは、「生活習慣病の肝臓への反映像」とも呼ばれています。実際、MASHの患者さんには、肥満、糖尿病高血圧脂質異常症などの生活習慣病が合併している人がほとんどです。ただし、睡眠時無呼吸症候群やある種の薬の服用、あるいは十二指腸や膵臓(すいぞう)の手術後に起こる栄養吸収障害が発症の原因になることもあります。

ただの脂肪肝から、炎症を生じてMASHへと進展してしまう原因は何でしょうか。
以前は、(1)まず生活習慣病から脂肪肝が発症し、(2)そこに内臓脂肪から炎症を起こす因子が分泌されることなどによって炎症が生じる、という「2段階説」が考えられていました。しかし最近の研究では、MASH発症には「インスリン抵抗性」「酸化ストレス」などとともに、遺伝的な体質(PNPLA3などの一塩基多型)がMASHの病態進行に深く関連しているということもわかっています。

なお、肝炎の原因はお酒や生活習慣病だけではありません。肝炎ウイルスの感染や、免疫系が自分自身の肝臓を攻撃してしまっている場合などもあります。こうしたケースではMASHとは異なる治療が必要なため、検査で確認する必要があります。

早期発見のポイント

・肥満・糖尿病高血圧脂質異常症などの生活習慣病
・健康診断で、脂肪肝や肝機能異常を指摘されたことがある(ALTが約30IU/L以上)
・お酒をあまり飲まない(1日に日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本以下)のに脂肪肝

脂肪肝には自覚症状はほとんどありません。脂肪肝の有無は、腹部エコーや血液検査で簡単に確認できるので、まずは健康診断をきちんと受けましょう。

脂肪肝が見つかった場合、それがただの脂肪肝なのか、炎症や肝線維化を伴うMASHなのかが問題になってきます。それを確認するには肝組織を調べる(肝生検)必要がありましたが、ここ数年は血液検査値を組み合わせ、人口知能(AI)を用いて、肝生検なしにMASHの可否を確認できるシステム(Fibro-Scape)を用いて診断報告をしています。

MASHになると、肝臓の中心静脈のまわりに大きな脂肪滴が蓄積し、肝細胞が風船様に腫大して、肝臓に線維が増えていきます。肝生検は、肝臓に直接針を刺して組織を採取する少し身体に負担のかかる検査です。そのため、血液検査で肝臓が炎症や線維化を起こしていないか、内臓脂肪の分泌する因子が関係していないかなどを事前に確認し、MASHの可能性が高い人だけに行なう必要がありました。しかしFibro-Scapeであれば、患者さんの予後に大きく関わる線維化の程度をAIで正確に導き出すことができます。

特に、高血圧と糖尿病が両方ある人や、閉経した女性ではMASHに進行している可能性が高いといわれています。

予防の基礎知識

まず、肥満、糖尿病高血圧脂質異常症などの生活習慣病を治療することが最も大切です。
特に、肥満のある人は高い確率で脂肪肝を合併しています。よい食生活や運動を心がけて、月1.5kg前後を目標に体重を減らしましょう。ただし、急激な体重増加だけでなく急激な痩せもMASHを発症する要因になります。適度なダイエットと運動を心がけましょう。

また、血液検査で「血清フェリチン値」が高いといわれたことがある人は、肝臓への鉄の過剰蓄積が起きています。これもMASHの患者さんによくみられる所見なので、血清フェリチンが高いといわれたことがあるのであれば、鉄分の多い食事を避けることが大切です。また肝臓の線維化が進んでいる(肝線維症)MASH患者の方は、肝がんを発症する危険性が高いので要注意です。

MASHの発症には遺伝も関係しており、家族や親族にMASHの患者さんがいる人は特に要注意です。肝機能異常を指摘されたら、MASHの可能性を考え、受診することが大切です。

解説:岡上 武
大阪府済生会吹田病院
名誉院長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

関連記事

  1. E型肝炎(病名から探す | 2024.2.7)
  2. 自己免疫性肝炎(病名から探す | 2023.8.16)
  3. アルコール性肝炎(病名から探す | 2019.12.4)
  4. 飲みすぎ注意!急性アルコール中毒・予防のススメ(病気解説特集 | 2019.4.26)
  5. 糖尿病(病名から探す | 2013.6.17)