スギ花粉の飛ぶ季節がやってきました。年々患者数が増加傾向にある花粉症ですが、大切なのは早めの治療と自身の生活スタイルに合った花粉対策です。しっかり予防して、さわやかな春を満喫しましょう。
花粉症のメカニズム
花粉症は、アレルギーが原因で起こります。アレルギーとは、本来は体の中に侵入してきた有害なものをやっつける”免疫”の機能が不必要に働いている状態のことです。例えば、スギの花粉症の場合、本来は有害ではないスギ花粉に対して免疫の機能が働いてしまい、体から追い出す反応が起こります。
花粉症を引き起こす植物としては、スギ、ヒノキ、ハルガヤ、カモガヤ、ブタクサなど約60種類が知られています。近年はヒノキによる花粉症患者も増えてきており、黄砂が多い時期と重なると、咳の症状が強くなることが知られています。症状が出るまでの期間には個人差がありますが、花粉にさらされ続けた頻度や量が問題になります。以下に主な花粉症の流行時期をまとめました。

症状は薬でコントロール
花粉症の症状には、鼻水、鼻づまり、くしゃみなどのアレルギー性鼻炎と、涙が出たり眼がかゆくなったりなどのアレルギー性結膜炎があります。花粉症はアレルギー体質の人に起こりやすく、アトピー性皮膚炎や喘息などに発展する場合もあります。また、鼻づまりがひどくなると、鼻の中に膿がたまる副鼻腔炎になることもあります。症状が悪化する前に、薬でしっかりとコントロールをすることが大切です。
花粉症の治療薬には、以下のようなものがあります。
1 抗ヒスタミン薬
ヒスタミンという、アレルギーに関わる物質を抑える薬です。以前は全身に作用する成分によって眠気などの副作用も強かったのですが、現在はアレルギーに関係する部分だけを抑える薬が開発されています。基本的には飲み薬として使います。2 ステロイド剤
アレルギーの反応自体を抑えます。花粉症の治療で使われているのは、点鼻のステロイド剤です。以前は、粘膜から吸収されて血中に入り、全身に影響することがある心配から使いにくい面がありましたが、現在では、血中に現れにくく副作用の少ない、効果の強い点鼻薬が開発されています。3 その他
抗ヒスタミン薬の使用だけだと効果が小さい場合は、抗ロイコトリエン薬といった、アレルギーに関与するほかの物質を抑える薬を併用する場合もあります。また、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)という漢方を使うこともあります。漢方は副作用が少ないと思われがちですが、複数の生薬を混ぜて作られているので、副作用の管理が難しいという一面もあります。漢方を使う際には、医師と相談してから使用するようにしましょう。※いずれの薬も妊婦の使用に関しては、安全性が確認されていません。妊娠している人や妊娠の可能性のある人は、医師に相談のうえ花粉症の予防を行いましょう。
お手軽な対処法
鼻水、鼻づまりの症状がつらいときは、温かい蒸しタオルなどを鼻の部分にあて、蒸気を鼻に通すようにしましょう。自律神経系の反射で、鼻の通りがよくなります。入浴も同様の効果があるので、鼻水、鼻づまりがひどい場合は、試してみましょう。
花粉に触れる量を減らし、症状を抑える
花粉症の症状を抑えるためには、花粉をできるだけ遠ざけることが大切です。日本気象協会や環境省の花粉飛散情報も参考にして、花粉が多い日には特に注意して対策をしましょう。また、最近の研究によると、花粉だけでなく、排気ガスや黄砂、PM2.5などがアレルギーを助長することがわかってきました。花粉の飛散情報と合わせて環境省大気汚染物質広域監視システムもチェックしてみましょう。
症状軽減のポイント
ポイント1
メガネやマスクで花粉を防御!
花粉症は、眼や鼻の粘膜に花粉がつくことで引き起こされます。メガネやマスクを装着して、なるべく花粉に直接触れないようにしましょう。ただし、マスクは鼻の横やあごの下に隙間があれば、そこから花粉が入ってきてしまいます。適切なサイズを選び、正しく装着して隙間をふさぐことが大切です。
ポイント2
帰宅時に花粉を落とす!
外出すると衣服に花粉がつきます。家の中に花粉が入ると、なかなか外に出ていきません。家に入る前にしっかりと花粉を払いましょう。特に、セーターやマフラーなどウール素材の衣類は花粉がつきやすいので、花粉が飛ぶ季節には避けたほうが無難です。また、洗濯物はなるべく部屋干しをするようにしましょう。
片側だけの鼻水・鼻づまりに注意!
鼻水、鼻づまりを甘くみていませんか? これらの症状の陰には、ほかの怖い病気が潜んでいる可能性があります。特に注意したいのは、片側だけに鼻水や鼻づまりが起こる場合です。成長の過程で鼻の中央を仕切る壁がゆがんでいる人は、片側だけに症状が起こることもありますが、鼻の中にできものがある場合や、癌ができているということもあり得ます。鼻の片側だけに症状が出る場合は、放置せずに一度耳鼻科で診てもらいましょう。

解説:小池 忍
京都府病院
耳鼻咽喉科
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